広大な海上を小ぢんまりした客船が目的地に向かってエンジン音を立てながら豪快に進む。
 頬杖をつきながら静かに窓の外、水平線を眺める男子高校生の男、緑埜 雷太(みどりの らいた)はちょっとイラついていながらも、隣で船酔いして嗚咽しまくっている赤毛の成人済みの女性を見て見ぬふりをする。
 猩々緋 風音(しょうじょうひ かざね)と言うらしい。清楚な白いワンピースを着ていて同じ色のつばが広い帽子をかぶっていながら、このザマであった。

「雷太くん。イライラしてないで背中さするくらいしてよ……うっ!」
「いつも乗り物に乗ったらそうなるだろ。乗客が見てるから他の場所行ってきてくれ」
「そんな〜」

 数少ない力を振り絞って客室を出て行った。すれ違い様に、雷太と似た髪色をした12歳ほどのいかにも大人しそうな少女がチラチラ外を見ながら隣に座り込む。

「大丈夫なのですか? なんか、よからぬ物を出しそうなんですけど」
「こあ、触れてはいけない時もあるんだ。大人の世界は」

 あんたも子供だろ。
 同じく苗字が緑埜で『こあ』という名前を持つ。かつて殺し屋をしていた。本来なら極刑が回避できないはずなのだが現在仮で司法関係のトップをしている風音の手回しで強い監視を条件に一応罪には問われていない状態だ。
 ちなみに仮の期間が終わっても次の手段は考えてあると、こあ本人には伝えられてある。

「そろそろ神秘の島に着く。行くぞ」


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 大自然が広がる、島の中央部分には神秘の山と呼ばれる聳える山があり、強大な壁のように聳え立つ様を兄弟は見上げる。
 風音は雷太に寄りかかりながら肩を組んで、船を降りながら嫌々寺院の方へ向かう。
 観光客のためにガイドをしている独特の衣装をした、こあほどの少女がガイドをしてくれるらしく、同行する事に。

「船酔いしたお姉さんは心配だけど、とにかく貴方達は初めて?」
「いえ、あたし達はクーラ ミタマさんの知り合いで用事あって来たんです」
「姫様の知り合い! それは思い切ってオモテナシしないと!」

 道中で色々お菓子屋お土産をもてなされ、寄り道が多かったが時間内に寺院手前に着く。