天馬さくらの超能力者発言から三日後の月曜日の朝。
俺は重い足取りで学校への道のりを歩いていた。

三日前の豪雨の影響で道路のあちらこちらに水たまりがある。
俺はそれらを踏まないように避けながら三日前の件を振り返った。

それにしてもあれはなんだったんだろうな。
さくらが雨を降らすと言ったら本当に雨が降ってきたことには正直驚いた。
雲一つない快晴だったのに急に豪雨になったからだ。
うーん、まさかだけどあいつの言うように本当にさくらには超能力があるのだろうか。

はっ、いやいやそんなことあるわけないよな。
俺は変な考えを頭から振り払う。
雨が突然降ったのは偶然に決まっている。可能性としてはなくはない。
もしくはあらかじめ天気予報を見ていて降る時間を計算していたのかもしれない。
うん。きっとそうだ。

だが文芸部の部員は揃いも揃ってさくらが超能力者だと思い込んでいるようだ。
それが困る。
双子の弟の流星はともかく、部長の土屋さんや文学眼鏡少女の高橋までがさくらが超能力を使えると信じて疑っていない。
それでなくても部員たちの個性の強さは多少気になっていたのにな。

「はぁ~。妙な部に入っちゃったな~……」

すると後方から凛とした声が聞こえた。
「真柴くんおはよう」
「……おう、高木さん。おはよう」
クラスのマドンナの高木さんだ。

「どうしたの? なんか元気ないね」
駆け寄ってきた高木さんは俺の顔を下から覗きこむように訊いてくる。

「いや、実は俺……文芸部に入ったんだ」
「えっ!? あの文芸部に入っちゃったの!?」
「ああ。高木さんも織田も入らない方がいいって忠告してくれてたのに聞かなくて悪かったな」
「ううん、それは別にいいんだけど……おかしなことされてない? 大丈夫?」
俺を気遣ってくれる優しい高木さん。

「しいて言えば天馬姉弟の姉の方が自分は超能力者だって言い出したことかな」
「あ~、やっぱり」
と高木さん。

「あの子すごく頭がいいみたいで新入生代表として全校集会でステージに上がったんだけど、突然校長先生からマイクを奪って自分は超能力者ですなんて言い出したから先生たちに体育館から連れ出されたのよ」
校長相手にまたすごい暴挙をしたもんだな。

高木さんは続ける。
「それまではものすごくきれいな子が一年に入ってきたってすごい話題だったんだけどその日から誰も彼女のことを口にしなくなったの」
「そんなことがあったのか。ちなみにその時は本当に超能力を使ってみせたりしたのか?」
「うんまあ、隕石を落としてみせるって言ってたけど……」
「それで落ちたのか?」
「ううん」
高木さんは首を横に振った。

そりゃそうだよな。隕石なんてどうやったって落とせるわけがない。
やはりさくらは超能力が使えると思い込んでいるだけの一般人に過ぎないわけだ。

「だから彼女も彼女の弟くんも学校で浮いちゃって……そんな時廃部寸前だった文芸部が二人を迎え入れたみたいなの」
「ふ~ん、まあそうなるか」
俺だってもし同じクラスに自分は超能力者だ、なんて本気で言ってる奴がいたら距離を置くもんな。

「真柴くん、今からでも部活変えさせてもらったら? まだ間に合うんじゃない?」
心配してくれるが、
「いや、いいよ。クラスで浮く気持ちは俺もわからなくはないから。一度入ったからには最後まで付き合ってやるさ」
俺も転校初日は不安だったし、今だって織田や高木さんがいなかったらクラスで一人寂しく昼飯を食べる羽目になっていたかもしれないんだ。

「そう。真柴くんて優しいんだね」
何を言うのかと思えばそれはこっちのセリフだぞ、高木さん。