俺たちはその後メリーゴーランドに一回とジェットコースターに六回乗ってからベンチで休憩していた。

「あ~叫び疲れたわ~」
高木はみっともなく手足をだらんとさせている。ワンピースのスカート部分が少しめくれているがお構いなしだ。

「そりゃあ六回もジェットコースターに乗ったらな」
終いには従業員に顔を覚えられ特別にジェットコースターの最前列に乗させてもらえたくらいだ。
全然嬉しくなかったが。

「……そろそろ帰るか?」
夕方になり寒くなってきた。風も冷たい。
このままでは風邪をひくかもしれない。

「じゃあ最後にあれに乗ってもいい?」
高木は夕日に照らされた観覧車を見上げ言った。
「観覧車か……」
まあ仮ではあるがデートの最後にはふさわしい乗り物かな。

「わかった。最後に乗って帰るか」
「うんっ」
高木は大きくうなずいた。

考えることはみんな同じようで観覧車には長い行列が出来ていた。
そこに並ぶこと三十分、やっと俺たちの番が来た。

観覧車に乗りこむと俺たちを乗せたゴンドラがゆっくりと上がっていく。

「遅いわね~」
「そういうもんだからな。観覧車は」

窓の外を見下ろす高木。
「見て良太くん、人が蟻みたいに見えるわよ」
「そういう表現はどうかと思うぞ」
と言いつつ俺も眺める。
確かに蟻みたいに見えないこともない。

「それにしても今日は楽しかったわ。ありがとうね」
「いいさ、別に。これも流星のためだしな」
と自分で言って気付く。
そういえばこれは流星を戻すためにしていたデートだったんだったな。
途中から高木との時間を素直に楽しんでしまっていたぞ。

「あ、流星くんなら心配しないで。私の方が多分力は上だからなんとかなると思うから。試しに明日になったら流星くんに会いに行ってみなよ」
「そっか……ありがとうな」
「ううん。ねぇ、それより目閉じて」
「な、なんで?」
「いいから早く」
「お、おう……」

まさか……。
この展開は……。

ぺしっ。

「いてっ」
俺は左頬をひっぱたかれた。

「あはっ、ごめんごめん。蚊がいたからつい……」
右手を上げながら謝る高木。笑っている。

「あ、蚊がいたのか……そっか」
「何? もしかしてキスされるとか思った?」
高木が下から俺の顔を覗き込む。

「ま、まさか」
されると思っていたなんて言えるわけない。

「あっそう。ふーん」
ぷいっと窓の外に顔を向ける。
あれ? 機嫌悪くしたかな?


「はい、ありがとうございましたー!」
そうこうしているうちにいつの間にかゴンドラは下に到着していた。

仕方ない。少し、いやかなり恥ずかしいが……。
俺は最後は彼氏らしくしてやるかと思い、ゴンドラから先に降りて高木に向かって手を差し伸べた。
「ほら。手を出せよ」
「あ、ありがと」
少し戸惑った様子を見せながらも高木は俺の手を掴んで降りる。
夕日に照らされて高木の顔は朱色に染まっていた。