半分の四キロ地点を過ぎた頃、遠くで銃声が鳴った。
「ん」
誰かがもうゴールテープを切ったようだ。
誰だろう?
さくらか高木さんかそれとも小杉たち陸上部員の誰かだろうか。
ちなみに織田ではない。織田は腹が痛いと言い出して途中から歩き出してしまったから俺のずっと後ろの方にいるはずだ。
マラソンコース上には二キロごとにチェックポイントがあってそれぞれの場所に先生たちが立っている。
生徒たちの中には友達感覚でチェックポイントに立つ先生に手を振っていく者もいた。
関係ないが俺はそういう奴らが大嫌いだ。
先生は先生。生徒は生徒。俺は線引きははっきりしたいタイプの古風な人間なのだ。
六キロ地点には教頭先生が立っていた。
またも生徒たちの中には教頭先生に対して「きょうとうー」と笑顔で手を振っていく奴らがいる。
まったく……。
俺はそれを見ないように顔を背けると、俺が顔を向けた先にボールを壁に蹴って遊んでいる男の子がいた。
一人か……?
危ないなぁ。
マラソンコースは普通の車道なので当然車も行き来している。
もしボールを追って車道に飛び出しでもしたら大変だ。
俺はなんとなく胸騒ぎがしてその男の子から目を離せずにいた。
昔から俺の勘は当たってほしくない時ほどよく当たる。
見ていると男の子が蹴ったボールが壁に跳ね返り車道に飛び出てしまった。
男の子はボールを追って車道へとことこと入っていく。
その時、車道には大型トラックが迫ってきていた。
「危ないっ!」
俺は口にするより早く男の子のもとへ駆け出していた。
そして、
キキキキキキィィィ……ドンッ!!!
男の子は無事助けることが出来たが、その代わりに俺は大型トラックにはねとばされ数メートル宙を舞った。
……全身が金縛りのようになって動けない中、俺は自分の体をその目で確認する。
血だ。
赤黒い血が道路にあふれて水たまりのようになっている。
周りの生徒たちは悲鳴を上げ、教頭先生は携帯電話に向かって必死に何かを叫んでいる。
……熱い。
……眠い。
時間の感覚がなくなってきた。それに手足の感覚も。
夢とも現実とも区別がつかない中、サイレンの音だけが妙にはっきりと聞こえてくる。
あー……眠いのにサイレンの音がうるさいな。
そんな時さくらが救急隊員の制止を振り切り俺のもとへ駆け寄ってくると俺の顔を両手でがっしりと掴んだ。
何か言っている。
あれ……?
さくらの奴……泣いているのか?
薄れゆく意識の中、俺は目に涙を浮かべ狼狽するさくらを視界にとらえていた。
これは夢だなきっと……さくらが泣くわけないもんな。
次の瞬間――
さくらは俺の唇に自分の唇を重ねた。
ふん……ほら見ろやっぱり夢だ、こんなこと……現実のわけがない。
……それにしても……こんな夢を見るなんて……俺はどうかしているな……。
「ん」
誰かがもうゴールテープを切ったようだ。
誰だろう?
さくらか高木さんかそれとも小杉たち陸上部員の誰かだろうか。
ちなみに織田ではない。織田は腹が痛いと言い出して途中から歩き出してしまったから俺のずっと後ろの方にいるはずだ。
マラソンコース上には二キロごとにチェックポイントがあってそれぞれの場所に先生たちが立っている。
生徒たちの中には友達感覚でチェックポイントに立つ先生に手を振っていく者もいた。
関係ないが俺はそういう奴らが大嫌いだ。
先生は先生。生徒は生徒。俺は線引きははっきりしたいタイプの古風な人間なのだ。
六キロ地点には教頭先生が立っていた。
またも生徒たちの中には教頭先生に対して「きょうとうー」と笑顔で手を振っていく奴らがいる。
まったく……。
俺はそれを見ないように顔を背けると、俺が顔を向けた先にボールを壁に蹴って遊んでいる男の子がいた。
一人か……?
危ないなぁ。
マラソンコースは普通の車道なので当然車も行き来している。
もしボールを追って車道に飛び出しでもしたら大変だ。
俺はなんとなく胸騒ぎがしてその男の子から目を離せずにいた。
昔から俺の勘は当たってほしくない時ほどよく当たる。
見ていると男の子が蹴ったボールが壁に跳ね返り車道に飛び出てしまった。
男の子はボールを追って車道へとことこと入っていく。
その時、車道には大型トラックが迫ってきていた。
「危ないっ!」
俺は口にするより早く男の子のもとへ駆け出していた。
そして、
キキキキキキィィィ……ドンッ!!!
男の子は無事助けることが出来たが、その代わりに俺は大型トラックにはねとばされ数メートル宙を舞った。
……全身が金縛りのようになって動けない中、俺は自分の体をその目で確認する。
血だ。
赤黒い血が道路にあふれて水たまりのようになっている。
周りの生徒たちは悲鳴を上げ、教頭先生は携帯電話に向かって必死に何かを叫んでいる。
……熱い。
……眠い。
時間の感覚がなくなってきた。それに手足の感覚も。
夢とも現実とも区別がつかない中、サイレンの音だけが妙にはっきりと聞こえてくる。
あー……眠いのにサイレンの音がうるさいな。
そんな時さくらが救急隊員の制止を振り切り俺のもとへ駆け寄ってくると俺の顔を両手でがっしりと掴んだ。
何か言っている。
あれ……?
さくらの奴……泣いているのか?
薄れゆく意識の中、俺は目に涙を浮かべ狼狽するさくらを視界にとらえていた。
これは夢だなきっと……さくらが泣くわけないもんな。
次の瞬間――
さくらは俺の唇に自分の唇を重ねた。
ふん……ほら見ろやっぱり夢だ、こんなこと……現実のわけがない。
……それにしても……こんな夢を見るなんて……俺はどうかしているな……。