みんな考えることは同じなようでベンチは既にどこもかしこも満員だった。

「なんなのよこれ、お昼どこで食べればいいわけ?」
さくらの機嫌が悪くなりかけた時、
「真柴くん、これ見て。この広場だったら地面にシートか何か敷けばそこで食べられるんじゃない?」
高木さんが水族館のパンフレットを俺に開いて見せた。

高木さんが指を差しているのは西部水族館の敷地内にある芝生の生えた広場。
「本当だ。ここならいいかもしれないな」
「うちレジャーシートなら持ってきとるで~」
と土屋さん。

「おお、最高じゃないですか。じゃあこの広場に行って昼飯にしましょう」
「お~!」
土屋さんが小さい腕を振り上げた。

「みんなもそれでいいよな?」
「もちろんです」
「うん、いいよ」
「……構わない」
「べっつにいいけどー」
言葉とは裏腹にあまりよさそうではないさくら。
何が気に食わないんだか。


広場には子供連れの家族やカップルが沢山いたがそれでも座れる場所は余裕であった。
土屋さんのレジャーシートを俺と流星で広げる。

「うわー。大きいレジャーシートですね」
「ふふっ、そうやろ。これ十人用のレジャーシートやもん」
高木さんが驚くのも無理はない。
土屋さんのレジャーシートは半分でも充分なくらい大きかった。

「じゃあお弁当ね。良太あたしのリュック貸して」
「はいよ」
一番重たいリュックを渡す。
中にダンベルでも入れてるのかっていうくらいさくらのリュックは重かった。

「じゃーん! あたしのお弁当はこれよっ!」
さくらがリュックの中から出したのは五段重ねのお重だった。
「ほら、中身も自信作よっ」
お重の中には豪華なおかずとおにぎりがぎっしり詰められていた。

「うわー、すごい。さくらちゃんてお料理上手なんだね」
「べっつに。それ程でもないけど」
さくらは高木さんのほめ言葉につっけんどんな態度で返すも表情は嬉しそうだ。

「じゃあ次はうちや。さくらちゃんと比べると見劣りするかも知らんけど……」
そう言って土屋さんは可愛らしいお弁当箱を三つ取り出した。
それぞれにおにぎりとおはぎといなり寿司が入っていた。

「おいしそうですね、土屋先輩」
「いっぱい食べてな~」
流星の声に両手を広げる。

「最後は美帆ね。美帆はどんなお弁当にしたの?」
「……わたしのはこれ」
高橋がリュックから出したのは大きな水筒二つ。

「これなんだ? 飲み物か?」
「……ちょっと違う」
俺の問いに首を横に振る高橋。

「……豚汁」
「豚汁? 中見てもいいか?」
「……うん」
水筒を開けると確かに中には豚汁が目一杯入っていた。

「二つとも豚汁か?」
「……うん」
なるほど、道理で高橋のリュックも重かったわけだ。

「ごめんなさい、私だけ何も持ってきてなくて……」
高木さんが謝るが、
「それは俺の連絡ミスだって言ったろ。悪いのは俺なんだから気にすることないぞ」
「そうよ。良太が悪いんだからあんたが反省しなさいよねっ」
「みんなで食べればええんやって」
「僕も持ってきていませんから」
「……わたしの豚汁も飲んで」
みんなが口々にフォローする。

「さっそんなことよりさっさと食べましょ」
「いただきま~す」
「……いただきます」
俺たちは三人の女子文芸部員の持ち寄った弁当に舌鼓をうった。
それにしても家庭的な一面など皆無に見えるさくらの料理がプロ級なのは未だに信じられない。

……まさかこれも流星の超能力じゃないよな。