スーパーで買い物を済ませた俺と流星はマンションへと向かっていた。

「姉さんを待たせると面倒なので急ぎましょう」
「そうだな」
かんしゃくを起こすさくらの姿は容易に想像できる。
俺たちは気持ち早足でさくらを含めた文芸部の女子部員たちの待つマンションへと足を運んだ。

マンションに着くと手慣れた様子でパネルを操作し流星は玄関を通り抜けていく。俺もあとに続いた。
ここに来るのは二回目だ。
前回はさくらが家出中に流星に呼ばれてやってきたから俺が前にも来たことがあるということはさくらはおそらく知らないだろう。

エレベーターで最上階へ上がり1213と書いてある部屋のドアを開ける。

「ただいまー。帰ったよ姉さん」
「お邪魔します」
俺たちは部屋に上がるとリビングへ。
そこにはさくらと土屋さんと高橋がいてテーブルを囲み絨毯の上にぺたんと座っていた。
テーブルの上には原稿用紙とさくらが出したのかジュースの入ったグラスが三つ置かれている。
最低限のもてなしは出来るようだ。

「遅かったじゃないの、寄り道してたんじゃないでしょうね」
「してねぇよ。これでも急いできたんだからな」
「ほら姉さん、夕飯の材料買ってきたよ」
流星はさくらに買い物袋を手渡した。

「じゃあ何か作ってくるわね」
とキッチンへ向かおうとする。

「え……流星じゃなくてさくらが作るのか?」
「当たり前でしょ」
とさくらは言うがこれは想定の範囲外だ。
さくらの性格からしててっきり家事は全て流星に任せっきりだとばかり思っていた。

「真柴先輩、姉さんは料理がとても上手なんですよ」
と流星。

「そうなのか。にわかには信じられないが」
「ふんっ。そこでおとなしく待っていなさい。あたしが今からあんたが見たこともないようなとんでもない料理を作ってきてあげるから」
自信満々の顔で言う。
頼むから普通の料理にしてくれ。


俺たちがジュースを飲んで待っていると三十分足らずでさくらが両手に皿を持って戻ってきた。
「料理が出来たわよ。ちょっと良太、あんたも一緒にお皿運んでちょうだい」
あごをしゃくるさくら。

「おう」
俺は素直にそれを聞き入れ立ち上がり移動する。

「これを持っていけばいいんだな?」
「そうよ」
キッチンに置かれた皿を指差す。どうやらパスタ料理らしい。
それにしてもまったく広いキッチンだ。見回すとうちのキッチンの三倍はある。

皿をテーブルに運び終えると俺とさくらは腰を下ろした。

「あたしの自信作、うにといくらとからすみのクリームパスタよっ。さあみんな遠慮なく食べてちょうだいっ」
さくらは楽しそうに両手を広げた。

「うわ~、おいしそうやな~」
「……いいにおい」
「これ僕の大好物なんですよ。すごくおいしいんですから」
確かにいいにおいがしておいしそうだ。まともそうな料理でよかった。

「ほら早く冷めないうちに食べなさいよ」
さくらに急かされ俺たちはいただきますを言ってフォークを手に取った。

麺をフォークに絡めて口に運ぶ。
「うん、おいしい」
「ほんまやっ」
「いつもの姉さんの味だよ。最高」
「……おいしい」
「でしょでしょ」
さくらは満足気に何度もうなずいた。

「おかわりもあるから言ってよね」
うーん、学校では見たことのないさくらの家庭的な一面を垣間見て俺は少しだけさくらを見直した。


その後俺とさくらは一回おかわりをして流星は三回もおかわりをした。
そして烏龍茶を飲みながら一息つく。

「は~、おいしかった~。うち、うにのパスタなんて初めて食べたわ」
「俺もです」
「……わたしも」
「ごちそうさま姉さん」
「まったく、あんたはさすがに食べすぎよ」
さくらが腹をさする流星を注意するがなんだか嬉しそうだ。

「良太、お皿片付けるの手伝って」
「はいはい」
ちゃっかり俺を下僕のようにこき使ってくるがあんなにおいしいパスタを食べさせてもらったんだ、少しくらいは黙って言うことを聞いてやろう。

四人分のグラスを持ったさくらの後ろを俺はみんなの皿を持ってついていく。
「ここに入れといてちょうだい。あとで洗うから」
「お前んとこすげー家なのに食洗機はないんだな」
こんな豪邸なら食洗機くらい置いていそうなものだが。

「食洗機ってあたし信用してないのよね。あんなのでちゃんと汚れが落ちるのかしら」
「さあ? うちにはないからわからないな」
「まあいいわ。そんなことより小説を書き始めるわよっ」
そうだった。今日の目的はそれだったな。