「別に誰かに言われたから決めたわけじゃないけどしばらくは超能力を使うのを控えることにするわっ!」
俺たち文芸部員の前でさくらはそう宣言した。

「え~、なんでなん。人助けはしようや~」
「みどりの気持ちもわかるけどあたしたちは文芸部員よ。文芸部らしいことをしましょっ」
そう言うとさくらはホワイトボードに文芸部の活動、と達筆な字で大きく書き上げた。

「どうなっとるん? 約束がちゃうやんか」とでも言いたげな恨みがましい目で俺を見てくる土屋さん。
すいません、約束守れませんでした。

思い通りになったはずの高橋は我関せずといった感じでいつものごとく文庫本に目線を落としていた。
ただ表情が若干緩んで見えるのは気のせいだろうか。

流星はというとスタンディングオベーションをかましている。
どこまでも子分肌な奴。
それに気分を良くしているさくらもさくらだが。

「さあ、文芸部の活動について意見のある人はいるっ? どんなことでもいいわよ!」
ホワイトボードをばんと叩き、さくらが声を張り上げた。

普段は協力的な土屋さんも今日ばかりは目立った発言はしない。
なぜなら土屋さんは俺をじと目で見続けることで忙しいから。

そこへ流星が名乗りを上げた。
「僕に考えがあります。僕たちは文芸部なんですから小説を書くというのはどうでしょうか?」
却下だ。
俺は楽が出来るというから文芸部に入ったんだぞ。
何が悲しくて華の高校生活を執筆作業に費やさないといけないんだ。

だがさくらは、
「いいじゃない流星。冴えてるわね」
と乗り気になっている。

勘弁してくれ。
こういう時こそ部長である土屋さんの出番ですよ。
俺は土屋さんを見るが土屋さんはなおも恨みがましい目を俺に向けていた。
結構根に持つタイプなのか、土屋さん。

仕方ない、俺が軌道修正するか。
「小説を書いてその後はどうするんだ? みんなで批評でもしあうのか? 俺たちみんな素人だぞ」
「じゃあ賞か何かにでも応募するっていうのはどう? あるんでしょそういうの」
「そうだね、姉さん。いい考えだと思うよ。それで本当に賞なんか取ったりしたら部費も大幅アップ間違いないよ」
さくらの太鼓を持つ流星。

「お前らなぁ、そんな作品書くのに何百時間かかるかわかってるのか?」
「え、そんなにかかるんですか?」
と流星が驚く。

自慢じゃないが俺はラノベ好きがこうじて中学生の頃、ゲームやアニメに費やす時間を削って何百時間という時間をかけて長編小説を書き上げ賞に応募したことがある。
自分では最高傑作のつもりだったが結局箸にも棒にも掛からなかった。
今読み返すと頭から血が噴き出そうなほど恥ずかしい代物だ。まさに黒歴史というやつだ。

「ああ。しかもそれだけの時間を費やしてもなんの結果もついてこない」
「やってみなきゃわからないじゃないのっ」
さくらがむきになって反論するが俺は実際やってみたからわかるんだよ。

「お前らが小説を書くのは構わないが俺はごめんだぞ。学校の勉強する方がまだいくらかましってもんだ」
「もう、美帆もなんとか言ってよ」
「……なんとか」
顔を上げ高橋は声を出した。
冗談のつもりだろうか、全然面白くないぞ高橋。

すると、
「うふふっ、ややわ~美帆ちゃん。めっちゃおもろいやん」
土屋さんが笑い出した。
関西弁っぽい喋り口調なのに笑いのハードルは低いのか、土屋さん。

まあなんにしても土屋さんの笑顔が戻ったのはいいことだ。
土屋さんが笑顔でいるかどうかで部室の雰囲気は全然違うからな。

「せやったら校内新聞に短い小説を載せてもろうたらええんとちゃうかなぁ」
「校内新聞ですか?」
俺が訊く。

「そうや。新聞部が毎月出してんねん。写真部とか俳句部とかもたまに作品を載せてもろうてるんやで」
「へーそうなんです――」
「それよっ!」
さくらが大声で叫んだ。

いきなり叫ぶなよ。びっくりするだろうが。

「みどりの案いただきだわ!」
そう言うとさくらはホワイトボードに校内新聞と殴り書きした。

「姉さん?」
「校内新聞なら先生たちもきっと目を通すはず。そこに涙なしでは読めないような小説を載せたら文芸部の評価もうなぎのぼりよっ。部費だって先生たちの方から是非上げさせてくれって頼みに来るに違いないわっ」
「そんなわけあるか」

だが俺のツッコミの甲斐もなく文芸部の当面の活動は校内新聞に載せる小説作りに決まった。