翌日、花園家に一通の文が届く。
そこには是非と花園家の娘に会いたいという言葉が綴られていたそうだ。
週末にも花園家を訪ねてくるそうだ。

「いいこと。あなたは絶対に部屋から出てこないで。わかった?」
「わかっております」
「花園家の恥じなのだから」

平然と小春の傷つくような言葉を放ち母親は去っていく。鬼司家の花嫁候補に涼音が選ばれたという噂は瞬く間に広がっていた。涼音の通う女学校でもその噂は広がっているようでそれを嬉しそうに両親に話す涼音を見ないようにして掃除をした。
自室の掃除は認められておらず、風呂にも十分に入れない小春の体には常にフケがついていた。それを見るたびに汚いと罵る涼音にただ謝ることしか出来ない。



いよいよ鬼司家の当主が花園家にやってくるという日になった。
当日は朝から使用人含め、花園家は騒がしかった。小春は言いつけられた通りに自室に籠っていた。
涼音は誰もが羨む鬼司家へ嫁ぐのだ。それはきっと、幸せな結婚になるだろう。


あやかしの見た目は人間とは区別がつかないため、普段からあやかしだと気が付かずに接していることもあるだろう。だが、一部の権力を持った一族は違う。その見た目もさることながら、オーラが違うのだ。
隠しきれぬ高貴で神々しいオーラは息を吞むほどだと聞く。もちろん小春がそのようなあやかしに出会ったことはない。