そんな日々の中、チャンスは突然訪れた。


「あー……今日の欠席は神谷だけだなー」


教室内にのんびりと広がる、担任の間の抜けた声。


顔を見合わせ、ホッと安堵の溜め息を吐くクラスメートたち。


ポツンと空いた、窓際一番後ろの席―――つまり、あたしの隣。


ひゃっほい今日は鬼がいないぞぉぉ!!という暗黙の空気が、みるみる内に教室内に広がる。


神谷は決して、誰彼かまわずインネンをつけるような(やから)じゃない。
攻撃するのはかろうじて、自分に関わろうとした相手だけだ。


だけどやっぱり神谷がいるというだけで、教室内には緊張が走る。
いつどんな毒を吐かれるのかと、焦らざるを得ない空気は否めない。