「助けるとは言ったものの……具体的にはどうしたものかな」

 シャーロットの故郷をどう助けるか、リルアは頭を悩ませていた。

「そういえば、シャーロットは警備隊の人たちからも逃げようとしていたよね。何か理由はあるの?」

「それが……私、見たの。街を襲った人間が、警備隊の制服を着た人間たちと仲良さそうに話してる姿を」

 リルアはそのセリフを聞いて憤慨する。

「なんだって⁈ それじゃまるで、国が犯罪行為を黙認しているようなものじゃないか」
「事情は分からないけど……村が襲われても助けがこなかったのにも、理由があるのかな」

 シャーロットは心細そうに声を振るわせる。
 リルアはどうも胡散臭い雰囲気に、思わず眉をしかめる。

「じゃあ、他所には頼れないか……ギルドに行こうにも、今の俺は冒険者登録を解除されてるし」

 ギルドはある種の独立組織のようなもので、貴族や警備隊も簡単には干渉できない。
 今回のようなケースでは力を借りるのに最適だったのだが、今のリルアは頼る事はできない。

「アークスに悪評を流されたのが手痛いな……」
「リルア、何かあったの?」

 シャーロットは不思議そうな顔でリルアを見つめる。

「ーーいや、実はね」

 リルアは手短に、冒険者パーティを役立たず扱いされてクビになったことを説明した。

「ひどい! 仲間に対してそんなことを言うなんて……それにリルアは役立たずじゃない! 一瞬であいつらを倒してくれた、すごく頼りになる存在だよ」
「あはは……照れるな。でも冒険者としては二流だったのは確かだから」

 何故か不満そうに頬を膨らますシャーロット。
 リルアは照れ臭くなって頭を掻く。

「えーと、改めて問題点を考えるとね」
「うん」
「この国では、冒険者がギルドを介さないで武力行使する事は、かなり重い罪になってしまうんだ」
「え! それじゃあ、どうすれば……」

 不安そうにするシャーロットの肩に、リルアがそっと手を置く。

「大丈夫だ、身元を隠して臨めばバレないさ」

 村を襲っている人間たちに、リルアだと認識されなければ特に問題はない。
 ある意味、リルアの影の薄さを逆手に取るのだ。

 今まで使っていた装備をアークスたちの元に置いてきたのも、結果としては都合が良かったかもしれない。
 顔を隠せば、誰もリルアの正体を見破ることはできないだろう。

 リルアは手短に戦闘の準備を済ませて、シャーロットとともに獣人の村に向けて出発した。