リルアは街を歩きながら、途方に暮れていた。
「……俺なりに、必死にみんなのサポートを頑張っていたつもりなんだけどな」
確かに俺は、剣士〈ソードマスター〉のアークスのように、自在に武器を使いこなすことはできない。
攻撃魔法士〈デストロイマジシャン〉のオリヴィアのように、炎や水を無から生み出すこともできない。
できるのは、補助的な役割だけ。
これは一人前の冒険者としては、致命的だ。
特に高ランクのクエストともなると、魔物を倒すための強力な魔法やスキルが必須といえる。
「一人でもこなせる低ランクのクエストで、なんとか食いつなげればと思ったけど……」
リルアは歯を食いしばって、拳を握りしめる。
Sランクパーティ『銀河の流星群』を抜けた後、俺はギルドに向かった。
しかしそこで受付の女性に、驚きの言葉を言い放たれたのだ。
「リルアさんは、ギルドの冒険者登録を剥奪されていますね」
「剥奪⁈」
リルアは驚きの声をあげる。
冒険者登録を剥奪されたなんて、全く身に覚えがない。
「ええ。剣士〈ソードマスター〉のアークスさんから、あなたがパーティ内で揉め事を起こして、迷惑していると訴えられています」
「なんだよ、それ……」
「ギルドはその訴えを重く受け止め、リルアさんの冒険者登録の剥奪を決定しました。街の英雄であるSランクパーティで、トラブルを起こすような人は、冒険者としてギルドに置いておけません」
「そんな」
訳を説明しようと何度も陳情したが、受付の女性は全く聞き入れてくれなかった。
本気でアークスの嘘を信じているようだった。
Sランクパーティのリーダーとしてこの街でトップレベルの影響力を持つアークスは、ギルドにもよく顔が効く。
支援役〈サポーター〉として、いつもパーティの隅っこにいたリルアとは、その信頼度は雲泥の差だ。
「冒険者登録の認められない人は、この街でクエスト依頼を受けることはできません。これはルールです」
結局、追い出されるようにしてギルドを後にした。
「冒険者は続けたかったんだけど……」
リルアはため息混じりに独りごちる。
「いっそ、スキルを活かして道具を作る生産職に回るか」
そう呟いて、財布の中身を確認する。
中には銀貨が数枚ある程度。
リルアの所持金はほとんどない。
装備を置いてきたのはもちろん、最近のクエストの成功報酬も、アークスから支払われなかったのだ。
抗議する間もなく、パーティを追い出されてしまった。
商売をするにも元手がいる。
悪評が経ってしまった今、この街では冒険者どころか資金を融資してもらうことも難しいだろう。
「これじゃ明日の飯代も心配だ……日銭を稼ぐためにも、他の街のギルドに移るしかないか。はぁ」
止まらないため息をつきながら、もう夕暮れ時の道を、あてもなく歩いていると、
「きゃっ!」
「……悲鳴か?」
どこか遠くから女性の悲鳴が聞こえた。
異変を察知したリルアは、すぐさま周囲に気を向ける。
「索敵〈サーチ〉」
ポツリと呟く。
同時に、リルアの聴覚や視覚が何倍にも引き上げられ、数十メートル先まで空間感知を可能にする。
「……ん。あっちか」
少し先の細い路地から、ドタドタと数人の男の足音と声が聞こえる。
それに、一人の女性の声も。
ダンジョンで鍛えた危機察知能力を持ってすれば、リルアにとってこの程度の支援魔法は造作もない。
「女性が襲われているようだな……」
一息置く間もなく、リルアはその場を駆け出した。
「……俺なりに、必死にみんなのサポートを頑張っていたつもりなんだけどな」
確かに俺は、剣士〈ソードマスター〉のアークスのように、自在に武器を使いこなすことはできない。
攻撃魔法士〈デストロイマジシャン〉のオリヴィアのように、炎や水を無から生み出すこともできない。
できるのは、補助的な役割だけ。
これは一人前の冒険者としては、致命的だ。
特に高ランクのクエストともなると、魔物を倒すための強力な魔法やスキルが必須といえる。
「一人でもこなせる低ランクのクエストで、なんとか食いつなげればと思ったけど……」
リルアは歯を食いしばって、拳を握りしめる。
Sランクパーティ『銀河の流星群』を抜けた後、俺はギルドに向かった。
しかしそこで受付の女性に、驚きの言葉を言い放たれたのだ。
「リルアさんは、ギルドの冒険者登録を剥奪されていますね」
「剥奪⁈」
リルアは驚きの声をあげる。
冒険者登録を剥奪されたなんて、全く身に覚えがない。
「ええ。剣士〈ソードマスター〉のアークスさんから、あなたがパーティ内で揉め事を起こして、迷惑していると訴えられています」
「なんだよ、それ……」
「ギルドはその訴えを重く受け止め、リルアさんの冒険者登録の剥奪を決定しました。街の英雄であるSランクパーティで、トラブルを起こすような人は、冒険者としてギルドに置いておけません」
「そんな」
訳を説明しようと何度も陳情したが、受付の女性は全く聞き入れてくれなかった。
本気でアークスの嘘を信じているようだった。
Sランクパーティのリーダーとしてこの街でトップレベルの影響力を持つアークスは、ギルドにもよく顔が効く。
支援役〈サポーター〉として、いつもパーティの隅っこにいたリルアとは、その信頼度は雲泥の差だ。
「冒険者登録の認められない人は、この街でクエスト依頼を受けることはできません。これはルールです」
結局、追い出されるようにしてギルドを後にした。
「冒険者は続けたかったんだけど……」
リルアはため息混じりに独りごちる。
「いっそ、スキルを活かして道具を作る生産職に回るか」
そう呟いて、財布の中身を確認する。
中には銀貨が数枚ある程度。
リルアの所持金はほとんどない。
装備を置いてきたのはもちろん、最近のクエストの成功報酬も、アークスから支払われなかったのだ。
抗議する間もなく、パーティを追い出されてしまった。
商売をするにも元手がいる。
悪評が経ってしまった今、この街では冒険者どころか資金を融資してもらうことも難しいだろう。
「これじゃ明日の飯代も心配だ……日銭を稼ぐためにも、他の街のギルドに移るしかないか。はぁ」
止まらないため息をつきながら、もう夕暮れ時の道を、あてもなく歩いていると、
「きゃっ!」
「……悲鳴か?」
どこか遠くから女性の悲鳴が聞こえた。
異変を察知したリルアは、すぐさま周囲に気を向ける。
「索敵〈サーチ〉」
ポツリと呟く。
同時に、リルアの聴覚や視覚が何倍にも引き上げられ、数十メートル先まで空間感知を可能にする。
「……ん。あっちか」
少し先の細い路地から、ドタドタと数人の男の足音と声が聞こえる。
それに、一人の女性の声も。
ダンジョンで鍛えた危機察知能力を持ってすれば、リルアにとってこの程度の支援魔法は造作もない。
「女性が襲われているようだな……」
一息置く間もなく、リルアはその場を駆け出した。