「なあ、リルア。お前は今日限りでパーティをクビだ」

「……は?」

 冷たく言い放たれたセリフに、リルアは唖然とした。
 リルアの驚く様子を気にもかけず、リーダーでアークスはさらに追い打ちをかける。

「今まで仕方なくパーティに置いてやっていたが、支援魔法しか使えない役立たずはこれ以上必要ないんだよ」

 Sランクパーティ『銀河の流星群』。

 この街でナンバーワンと名高い、冒険者パーティだ。
 数々のダンジョンを踏破し、輝かしい戦績とともにその名を馳せている。

 リルアはそのパーティの支援役〈サポーター〉。
 アークスはリーダーの剣士〈ソードマスター〉だ。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 確かに俺は攻撃魔法は使えないけど、俺なりに頑張って……」

「だーかーら、その攻撃魔法が使えないのが問題なんだよ」

 リルアの必死の訴えを、アークスはせせら笑う。

「クエスト難易度が上がるにつれて、明らかにお前はついて来れなくなってるじゃないか」
「っ……。戦闘で前に出ていないことは認めるけど、身体強化や回復魔法でサポートしてるし」

「その支援魔法だって、アイテムで代替できるものばかりじゃねぇか。今時、アイテム使えば回復や強化なんて誰でもできるんだよ」
「それは、そうだけど……」

「いい加減分かりなさいよ、役立たずの支援役〈サポーター〉リルアさん」

 身を乗り出すようにして、傍から攻撃魔法士〈デストロイマジシャン〉のオリヴィアが口を挟む。

「私たちには目標があるの。アンタが居たら、その邪魔になるわ」
「……目標?」

「SSランクパーティに俺たちはなるんだよ」

 アークスは腕を組みながら、自信満々に答えた。

「SSランクパーティって、王国に一つしか存在していない、伝説のパーティじゃないか」

 S Sランクパークティ。
 それは王国全土でも数えるほどしかない Sランクパーティの中でも、さらに伝説レベルの功績を残したパーティのみが名乗れる、雲の上の存在だ。

 S Sランクパーティになると、もはや冒険者の枠を超え、王国騎士団にも勝る絶対的な権力と富を手に入れるという。

「そうだ。そのためには、国王と有力貴族に認められる必要がある。お前のような支援しかできない無能がいると、足手纏いなんだよ」

 アークスは他のパーティメンバーと顔を見合わせて、笑い合う。

 こいつらは自分達が絶対的に強いと確信している。
 そして、本気でリルアを切り捨てるつもりだ。

 そんな状況に、リルアは悔しさと悲しさが入り混じる。

「俺はお前らのことを仲間だと思っていたよ」
「そりゃお前だけだ。俺たちは『上』に行く存在だからな。雑魚とはこれ以上関わってられない」

 ははは、とパーティメンバー達は嘲るような笑い声をあげる。

「……っ、分かったよ。今まで世話になったな」
「もちろん装備は置いていけよ。それは俺らが戦って稼いだ金で買ったものだ」

 リルアは唇を噛みながら、身につけていた装備を外し、その場に置く。

「なんだっけ、お前の本当のスキル。『かそく』と『せいし』だっけ? その変なスキルでせいぜい頑張れよ」
「ぷっ……笑っちゃだめよね。無能のリルア、じゃあね〜」

「……じゃあな」

 振り返ることもなく、重い足取りで、リルアはその場を後にした。