横山商店に着くと二人はもう着いていた。

 いつも二人は集合が早いためギリギリに来る俺達は早速エスコートの出鼻をくじかれる。
 わかっているのにギリギリに来る癖は治らない。
「あ! 見てみてこれ!」
 到着早々、森さんがビニール袋を広げる。
 中にはラムネが四本入っていた。
「用意が良いなー! 何もいらないって言ったのに!」
 笑う山根に杉川さんが「違う違う!」と首を振る。
「横山さんがくれたの。常連さんにサービスだって!」
「私たちも常連さんだって!」
 嬉しそうにキャッキャする二人を店のガラス越しに見ているおじさんはニヤッと笑っていた。
「ありがとーっす!」
 俺と山根が扉を開けてお礼を言うといつもの仏頂面で「お前らにやったんじゃねーよ」とうそぶいた。ラムネ四本でバレバレなのだが、そこは突っ込まず、もう一度お礼を言って外に出た。
「さぁ!二人とも後ろに座って!」
 荷台をバンバンと叩く山根に二人はきょとんとしている。
「え? 車なんじゃないの?」
 森さんは眉間に皺を寄せている。
「いや、エスコートだから! 今日は俺達が運転手だ!」
 握りこぶしを作って決め顔を作る山根の頭が引っ叩かれるのにコンマ数秒もなかった。
「バカじゃないの! エスコートって何言ってるの!? 女の子荷台に乗せて何が運転手よ!」
 声を上げながら呆れている森さんの横で杉川さんは笑っていた。
「さすが斜め上!」
 杉川さんは笑いながら俺の後ろに来る。
「行こ! 聡美。思ったよりお尻痛くないよ!」
 山根の荷台を指差して森さんを誘導する。えー? と、しぶしぶ山根の後ろに来る森さんを横目に山根は俺と杉川さんを見てニヤリと笑った。
「おやー? なんで荷台が痛くないの知ってるのかな〜?」
「い、いやそれは!」
 どう躱そうかと杉川さんを見ると杉川さんは口を結んだまま顔が少し赤くなっていた。
「ま、いっか! 行こうぜ!」
 飽き症の山根は自分から突っ込んでおいて投げっぱなしのまま森さんを乗せて走り出す。
「お、俺達もい、行こっか」
 動揺してつっかえまくる俺に杉川さんも全く突っ込まず「う、うん」とつっかえた。
 山根のせいで昨日とは打って変わって会話が弾まず、照れくさい空気が流れていた。

 道中の風が心地良いのが救いだった。