翌日。俺は山根の家にいた。

「バカ! そこでちゃんと二人でって言えよ! バカ!」
 山根は麦茶を飲みながら笑ってバカを連発する。
「いやー、でもあんな笑顔見ちゃったら言えないよ」
 テーブルに項垂れながら俺はか細く呟いた。
「まぁお前にしては大きな一歩か。勘違いされて終わったけど」
 山根は俺の頭をはたいて続ける。
「でもよ。聡美ちゃんが言うには杉川さん、やっぱこの夏休みで結構告白されてるみたいだぞ?」
「嘘!?」
 山根の言葉に顔を上げると山根はハァっとため息をついて、本当。と呆れたように答えた。
「まぁ全部断ってるらしいんだけど」
 俺はホッと胸を撫で下ろす。
「でもやっぱ安心は出来ないだろ。いつ良い男が現れるかわかったもんじゃねぇし」
 やっぱ祭りで決めるべきだよ。と山根は言う。
「うーん」
 俺は頭を抱えてまたうなだれた。わかってはいる。わかっってはいるんだけど……
 山根は見かねたのか、まぁでも四人でも楽しいからいいけどな。となけなしのフォローをいれて携帯を取り出した。
「あ、もしもし聡美ちゃん? うん。そうそう。その話で電話したの。マジで? っしゃあ! 楽しみにしてるわー! あ、ううん何でも無い! じゃあ詳しい事はまた今度!」
「どうした?」
「朗報だよ。二人とも当日は浴衣だってさ」
 山根はニヤリと笑った。
「うそ! ゆかた!」
 俺は浴衣というワードに一気に元気をとり戻す。二人で両手を挙げて喜んだ。

 山根は、まぁ夏休み最後のイベントだし楽しもうぜ! と俺の両手を取り、テーブルの周りを二人でグルグル回った。