翌朝、目覚めると隣に鈴音さんがいた。

「えええええ⁈」

 僕は悲鳴に近い声をあげて、着物の裾を整える。まさか、まさか僕は鈴音さんと一線を越えてしまったのか⁈

「なんだ、朝から煩い奴だ」

 鈴音さんの色っぽくはだけた着物を見て、僕は目だけじゃなく身体ごと逸らした。

「こんなところで私も寝てしまったのか」

 鈴音さんもきのうの夜の記憶が曖昧らしい。眠たそうに目をこすっている。

「どうした、そんなに動揺して」
「いやだって、だって……!」

 何事だ、と源次郎さんが部屋の戸を思いっきり開けた。一瞬目が合うも、敷布団の上にいる僕と鈴音さんを交互に見て「すまない」と戸を閉められた。

「源次郎さん、違うんです!」

 扉の方へ手を向けて僕は叫んだ。しかし、戸は二度と開かなかった。

「まさか浩一、私と何かあったと思っているのかい?」

 そう言って鈴音さんはぷっと息を漏らし、腹を抱えて笑い転げた。僕は何がなんだかわからずただ途方に暮れていた。

「簪と一体何が起こるって言うんだい。あんた、相当変態だねぇ」

 僕は布団から飛び出て、階段を転げ落ちるように駆け下りた。急いで服に着替える。慌てすぎて服を反対に着てしまい、もう一度脱ぐ。時計に目をやる。しまった! 遅刻ギリギリだ。

「い、行ってきます!」

 鈴音さんは階段の上から笑ったまま手を振った。