彼女との出会いは中一の夏、塾の夏期講習だった。

クラスは違ったけど、廊下ですれ違った瞬間に目を奪われた。薄いレンズさえ邪魔な気がして、思わず眼鏡を外した。

一目惚れだった。

マシュマロみたいに白い肌も、小柄で華奢な体も、風になびいてふわふわ揺れる長い髪も、全てが俺の細胞を惹きつける要因だった。

まさか自分が一目惚れなんてする日が来るとは思わなかった。

誰かに興味を持ったこと自体が人生で一度たりともなかったから。

幼稚園のとき、小学生のとき、そして中学生になってからの数ヶ月間。誰が誰を好きだとか誰と誰が付き合ったとか別れたとか、周りはそんな話ばっかだった。

中学生になってからは特に「どの女子が一番タイプか」とかいう話題が大半を占めるようになって、毎日のように誰かが「彼女がほしい」とか嘆いてるのを耳にして、実際に彼女ができた奴は神童のようにもてはやされてた。

一切興味がなかった。かといって他に興味を引かれる何かがあったわけでもない。

ほとんど流れ作業みたいに、ただ色褪せた毎日をなんとなく過ごしてるだけだった。

そんな俺は、たったの一日で全ての細胞が生まれ変わったみたいに、彼女のことばっかり考えるようになった。