「おっはよー! 陸くん」

 彼女の声が近づいてくる。途端に視界が色づいて、いつもの通学路でさえもショーステージのように素晴らしい場所のように思える。
 4月から中学2年生になった僕ら。クラス替えをしても、また同じクラスになった。しかし、彼女は全く僕のことを意識しない。するはずもない。
 田口美咲に出会ったのは、去年の入学式の日。少女漫画のような出会いだった。

「やばい! みんなもう体育館で着席してるのに!」
 僕は入学式直前、緊張でお腹が痛くなり、トイレに引きこもってしまった。もうすぐ式が始まるはずだと思い、痛みを堪えて走っていると……
 バタン!!
 廊下の曲がり角で、彼女とぶつかった。
「ごめんなさい。大丈夫?」
 美咲が手を差し伸べる。周りには、目に見えない黄色いオーラが漂う。
 それは少女漫画のような出会いだった。ただし、ヒロインは綾乃陸という、平凡な男子中学生。
 胸が熱く、今にも飛び出そうだった。
 その日、僕は初めての恋を知った。