聖剣の威力はすさまじく、モンスター化していた木々も含め森は跡形もなく消え去った。
 すると、グレーの壁が歴史を物語る古城が見えた。
 車に乗り込み、古城を目指す。古城までは一直線だ。
 古城の門の前に着くと、
「さあ、行くぞ」
 シオンは躊躇う事もなく、歩みだした。
 古城へ着くと、ソフィアが申し出た。
「シオン様、もしかしたら魔術で結界がはられているかもしれません。失礼を承知ですが、ここはわたくしが先にまいりますのでこの場でお待ちください」
 ソフィアは、貴族であるシオンの先を歩いてはいけないと思って進言したのだが、シオンは全く気にしていないようだ。
「いいよ。俺たちも一緒に行くよ。あんな、あやしそうなところにひとりで行かせられないって」
 と言って、レオナルドにもアイコンタクトをした。
 案の定、古城の門は強い魔術で固く閉じられていた。
 古い門なのであちこちがサビていて、シオンが何度か本気で蹴れば突破できそうにも思えたが、魔術のせいか頭痛や目眩がひどくなり、近づくだけで気絶しそうになった。
 一旦避難し、対策を練ることにした。
「どーするの? キャロラインちゃんの魔術でなんとかなる?」
「はい。門ごと壊します」
 大胆すぎる作戦に、シオンは「わぁお!」
と、大げさに驚いてみせた。
「シオン様、ソフィアさん、本当にここにマーシャ王女様が居るのですか? もし違ったら大変な事になりますよ」
 心配するレオナルドに、ソフィアは自信をもって答えた。
「いいえ、マーシャ王女様はここにいらっしゃいます。森で感じた魔力と同じ魔力がここにあります」
「だって。じゃあキャロラインちゃん、遠慮しないでやっちゃって!」
 シオンは、今度はどんな魔術攻撃をしてくれるのか楽しみだった。
「あのキャロラインビームでもいいよ! 可愛かったし!」
 と、少しからかうように言うとソフィアは顔を赤く染めて、
「もう金輪際あの魔術は使いません!」
 と言ってそっぽむいた。
 ソフィアは、両手を天に向かって突き上げた。手のひらは太陽にかざして。
 そして、シオンにもレオナルドにも聞き取れないくらいの小声でなにかを唱えた。
 すると数分後、今までは見えなかった黒い煙が古城から溢れ出し、ソフィアの両手の上に吸いこまれていった。
「今のが結界なの?」