「それ、絶対に恋でしょ!」

 ド直球で言い当てられた私は、思わずソーダを口から吹き出してしまいそうだった。
 いくら幼なじみの家とはいえ、さすがに吹き出すわけにはいかない。

「こ、こひ!?」
「ほら、声裏返った! 動揺してるじゃん!」
「してない、してないってば」
「素直になりな。ついに来たか~、ちかげの初恋!」

 まるで我がことのように頬を赤らめる穂花。
 恋に恋する、とはまさにこのことなのか。

……って、まだ私が恋していると認めたわけじゃないし!

「違うんだって。なんだか気になるだけで、好きとか胸が熱くなるとかそういうのとはぜんぜ」
「いやもうそれが恋なんだってば。好きって気持ちを両腕で一生懸命押し戻している感じっていうの? わかるよ、私だって何回も恋してきたから。『なんで私がこんな奴のこと気にしてんの? まさか恋!? いやいや、あんなナルシスト野郎のこと、好きなわけないし!?』ってね。――それが恋じゃないって否定するのは、恋している何よりの証拠なのよ」
 途中まで滑稽な一人芝居をかましていた穂花だったが、最後の一言だけはシリアスに決めた。ちょっとかっこいい穂花。……いや、褒めてるわけじゃないけど。

 そりゃ、穂花からすれば「恋じゃないって否定すること」は「恋している証拠」と簡単に片付けられるだろう。

 でも私は真剣に、恋している自分を否定したいのだ。

 それはもちろん――まだこの光溢れる世界で生きていたいから。