「こら青柳、ピアノで遊ぶなー」
「遊んでませんむしろ俺の演奏は良きBGMとなります」
「そうだな、じゃあお前は残りの一年は吹奏楽部に入ったらどうだ」
「荻ちゃん、俺がサッカー部蹴ったから拗ねてんでしょ」
「いつの話してんだ。いいからはやく手伝え」
「ジャジャジャジャーン」
「鍵盤をそんなふうに叩んじゃない」



時は流れ、3月1日。

明日に迫った卒業式の準備の手伝いをしてくれと生徒会に駆り出されたおたすけ部は、職員と一緒になって体育館に在校生分のパイプ椅子を並べる作業をまかされた。

せっせとパイプ椅子を運ぶ私の横で、ピアノで遊ぶ茅人が怒られている。おたすけ部の恥である。やめてほしい。


「壱弥、あいつ引き戻してきてよ」
「おれ触れないからなあ。口頭で説得できる自信ないや」


体育館の壁に寄りかかる壱弥にそう言うも、「茅人はほっとくのが一番いいよ」と言われてしまい、私は呆れてため息を吐いた。おたすけ部で現在真面目にパイプ椅子を運んでいるのは私だけだ。手伝いに呼ばれたはいいけれど、ほとんど戦力になっていないだろう。



「粟野さんも相変わらず大変そうねぇ」


すると、後ろから声がかけられた。振り向くと美術教師の牛島先生が立っていて、「青柳くんは元気そうね」と微笑んでいた。