私の頭の上から、緒方の声がした。顔を上げると、彼はもう教科書を拾い終わり立ち上がって私を見ていた。変化に気づいた。彼の目が、少しだけ生き返っている。私は立ち上がって彼に「持って帰るよ」と答えた。彼の言葉に従ったのは、私なりのお詫びのつもりだ。ごめんなさい、とは素直に言えない。それは無理。キャラ的に。そこは許して欲しい。
「ひとつの紙袋には入らないな。職員室で紙袋もうひとつもらって来ないと」
緒方はすのこの上に残ったもうひとつの紙袋を見て言った。
「えー、職員室は行きたくないよ」
私は緒方の提案に首を横に振った。もう今日はあの宮下の顔は見たくない。そもそもあの支配的な空気が私は、大嫌いだ。
「じゃあ、どうするの?」
「緒方くん、私の家で冷たい麦茶でも飲んでいきなよ」
私はにっこりと、めったに使わない満面の笑顔を彼に披露した。
教科書の運搬を手伝えと、いう意味をこめて。
「お前調子いいな」
目の前の男子は、呆れ顔になっていた。でも、不快そうな感じは受けなかった。私は焦げ茶色のローファーを履いて紙袋を持つと、「緒方くん、銀河商店街って知ってる?」と尋ねた。
「知ってるけど」
「私の家、そこの奥にあるみたい。コメダっていう名前の喫茶店がそばにあるっぽい」
「あるっぽいって、自分の家だろ」
「私も行くのは、初めてなんだ。ナビよろしく」
「お前、本当調子いいな」
「ひとつの紙袋には入らないな。職員室で紙袋もうひとつもらって来ないと」
緒方はすのこの上に残ったもうひとつの紙袋を見て言った。
「えー、職員室は行きたくないよ」
私は緒方の提案に首を横に振った。もう今日はあの宮下の顔は見たくない。そもそもあの支配的な空気が私は、大嫌いだ。
「じゃあ、どうするの?」
「緒方くん、私の家で冷たい麦茶でも飲んでいきなよ」
私はにっこりと、めったに使わない満面の笑顔を彼に披露した。
教科書の運搬を手伝えと、いう意味をこめて。
「お前調子いいな」
目の前の男子は、呆れ顔になっていた。でも、不快そうな感じは受けなかった。私は焦げ茶色のローファーを履いて紙袋を持つと、「緒方くん、銀河商店街って知ってる?」と尋ねた。
「知ってるけど」
「私の家、そこの奥にあるみたい。コメダっていう名前の喫茶店がそばにあるっぽい」
「あるっぽいって、自分の家だろ」
「私も行くのは、初めてなんだ。ナビよろしく」
「お前、本当調子いいな」