恐る恐るドアを開け、碧の姿を探した。

廊下にも、碧の部屋にも、家中のどこにも碧の姿はなかった。

「おじさん、碧がいない」

おじさんは一点を見つめてじっと何かを考えこんでいる。

「おじさん、碧を助けに行かなきゃ」

碧は衛兵に連れて行かれてしまったに違いない。早く助けに行かないと。

「七月子、僕が贈ったお香を使ったんだね。あと、どれだけ残っている?」

「あと、……一本だけ」

碧を助けるチャンスは一回だけ。

「おじさん、このお香は何なの? なんでこんなおかしなことが起こるの?」

「それは僕にも分からない。これを買った店で僕が聞いたのは煙の中に面白い物が見えるってことだけで、まさかこんなことが起こるなんて思いもしなかった」

「おじさんもやっぱりこのお香のせいであの牢獄にいたんだよね」

「何度目かにお香を焚いた時、部屋から出ていたせいで帰れなくなった。僕はあそこで三ヶ月ほど過ごした」

「三ヶ月も? でもどうして最初わたしのことが分からなかったの?」

「多分、この仮面のせいだ」