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 大会まで残り二週間を切った。

 みんな練習も大詰めに入り、気合いも一段と感じる。ピリピリした空気が漂う中、俺だけが一人蚊帳の外。

 練習にも身が入らず、勉強も手につかず、時間だけが無駄に過ぎていた。

「なぁなぁ小牧!」

 そんなある日、友達が俺のそばへと駆け寄った。

「……なに」

 内心俺は、絶望していた。

 一番のライバルである瀬戸に呆れられて、監督にも突き放されて、こんな俺がバスケをする権利があるのだろうかと。

「今度の試合いつあるの?」
「……なんで」
「なんで、って応援に行こうと思って!」

 屈託のない笑みを浮かべたあと、

「てか、みんなで行こうと思ってさ!」

 そう言うと、どこからともなく集まったクラスメイト。「私も!」「俺も」口を揃えて次々と手をあげる。

 団結力に呆気にとられるも、今のそれが俺にとっては鬱陶しくも感じて。

「……いいよ、べつに来なくても」

 突き放すようなことを言ってしまう。

「何言ってるんだよ。お前の活躍をみんな見たいんだって!」

 どうせ応援に来たって俺は大会に出るわけじゃないし。
 なんで大会に出ないんだよって責め立てられるのも面倒だし、そう思って、

「活躍ってべつに……」

 しゃべろうとするけれど、言葉に詰まってしまう。

 すると、

「いいか! 小牧!」

 視界のど真ん中にビシッと向けられた指に、少し驚いて息を飲んだ。

「お前が思ってるより、俺たちみんな小牧がレギュラーに選ばれてすっげー嬉しいんだぞ。そんなのみんなで応援したいに決まってるんじゃん!」

 彼の言葉に続くように、「そうだそうだ」と同調する。

 なんだよ、これ。なんでこんなにみんなが嬉しがるんだよ。他人事のためにこんなに幸福感のような笑顔が出るのかよ。

 けれど俺は、レギュラーを降りた。

 だから、クラスメイトが来たって俺が大会に出ることはない。

「みんなには言ってなかったけどさ、実は……」

 固く結んでいた唇を解いて、ゆっくりと開いた瞬間。

 ──お前、ほんとにそれでいいのかよ!

 頭の中に響いた言葉によって、薄く開いた唇から真実を告げようと思ったが、なぜか言葉が出てこなくて。代わりに息だけが現れる。

「……?」

 なんだ。なんで、声が出ないんだよ。

 せっかく選ばれたレギュラーを降りて、今さらながら後悔してるのか?

「小牧、どうした?」

 困惑したように俺に尋ねる。