◇
大会まで残り二週間を切った。
みんな練習も大詰めに入り、気合いも一段と感じる。ピリピリした空気が漂う中、俺だけが一人蚊帳の外。
練習にも身が入らず、勉強も手につかず、時間だけが無駄に過ぎていた。
「なぁなぁ小牧!」
そんなある日、友達が俺のそばへと駆け寄った。
「……なに」
内心俺は、絶望していた。
一番のライバルである瀬戸に呆れられて、監督にも突き放されて、こんな俺がバスケをする権利があるのだろうかと。
「今度の試合いつあるの?」
「……なんで」
「なんで、って応援に行こうと思って!」
屈託のない笑みを浮かべたあと、
「てか、みんなで行こうと思ってさ!」
そう言うと、どこからともなく集まったクラスメイト。「私も!」「俺も」口を揃えて次々と手をあげる。
団結力に呆気にとられるも、今のそれが俺にとっては鬱陶しくも感じて。
「……いいよ、べつに来なくても」
突き放すようなことを言ってしまう。
「何言ってるんだよ。お前の活躍をみんな見たいんだって!」
どうせ応援に来たって俺は大会に出るわけじゃないし。
なんで大会に出ないんだよって責め立てられるのも面倒だし、そう思って、
「活躍ってべつに……」
しゃべろうとするけれど、言葉に詰まってしまう。
すると、
「いいか! 小牧!」
視界のど真ん中にビシッと向けられた指に、少し驚いて息を飲んだ。
「お前が思ってるより、俺たちみんな小牧がレギュラーに選ばれてすっげー嬉しいんだぞ。そんなのみんなで応援したいに決まってるんじゃん!」
彼の言葉に続くように、「そうだそうだ」と同調する。
なんだよ、これ。なんでこんなにみんなが嬉しがるんだよ。他人事のためにこんなに幸福感のような笑顔が出るのかよ。
けれど俺は、レギュラーを降りた。
だから、クラスメイトが来たって俺が大会に出ることはない。
「みんなには言ってなかったけどさ、実は……」
固く結んでいた唇を解いて、ゆっくりと開いた瞬間。
──お前、ほんとにそれでいいのかよ!
頭の中に響いた言葉によって、薄く開いた唇から真実を告げようと思ったが、なぜか言葉が出てこなくて。代わりに息だけが現れる。
「……?」
なんだ。なんで、声が出ないんだよ。
せっかく選ばれたレギュラーを降りて、今さらながら後悔してるのか?
「小牧、どうした?」
困惑したように俺に尋ねる。