◇

 それから数日間、心ここに在らずで練習に参加していた。
 けれど、練習に身が入らなかった俺に悲劇が起こる。

「──小牧、危ない!」

 よそ見をしていた俺の後頭部にボールがぶつかった。

 そのせいでよろめいた俺は、床に座り込む。

「大丈夫かっ、小牧!」

 その場にいたメンバーが俺に駆け寄った。

 心配そうな眼差しを向けられるが、俺にはその資格がない。

「…はい、大丈夫です」

 俺がよそ見をしていたせいだ。
 俺が練習に集中していなかった。

 そのために起こった悲劇だ。

「そうか。でも念のため保険医に見てもらった方がいい」

 そう告げられるから、

「だ、大丈夫です! 俺、何ともないですから!」

 無事をアピールするかのように立ち上がり、明るく振る舞った。

「でも、なぁ……」

 それでも納得できないのか三年生はお互い顔を見合わせて顔を渋る。

「ほんとに俺、大丈夫です。少し休憩したらまた練習できますので」

 俺が引き下がると、そうか、少し安堵したように頷き合った。

「じゃあ少し休憩しとくんだぞ」

 キャプテンの言葉に俺は、はい、と返事をすると、メンバーはみんな元の位置へ戻った。

 休憩をしようと移動するとき、視線を感じて顔をあげると、瀬戸とぶつかった。が、フイッと逸らされる。
 そうして何事もなかったかのように練習を続けた。

「……そう、だよな」

 俺があんなこと言ったんだ。

 一方的に突き放すような、怒らせるような。

 瀬戸の反応が正しいんだ。瀬戸が悪いわけじゃない。
 俺が、情けないだけなんだ。

 こんな大事な時期に練習中に余計なことを考えて、ミスをしてしまうなんて。みんな真剣に、優勝目指して頑張っているのに、俺は何だ。

 俺はどこまでいってもバカだ。

 ──ほんと、俺ってダメだなぁ。

 大会まで残り二週間。

 やっぱり言うなら今日しかない。

 
 ***


「……あのっ、監督」

 部活終わりのあいさつのあと、監督を引き止めた。

「なんだ、小牧。どうした」

 更衣室にみんな戻り、体育館には俺だけだった。

「監督に話があるんです」
「話?」
「は、はい」

 いざ話すとなると、緊張感が一気に加速する。

「じ、実は……」

 ゴクリと固唾を飲んで、ゆっくりと口を開く。