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 結局、妹のために買ったお守りは勇気がなくて机の中にしまったまま。冬休みは終わり、新学期が始まった。

「あーあ。あっという間に冬休み終わっちゃったね」

 冬休みは、二週間ほどしかない。だから、バイトをしていたらほどんど一瞬のように過ぎ去った。

「美月は冬休み、何してた?」
「あ、えっと……バイトかな」
「そっかぁ。俺はお正月ぐーたらしてたら気がつけば冬休み終わってたって感じ」

 いつものように笑う千聖くん。

 まるで〝あの日〟のことは何事もなかったかのように振る舞っている。

「お正月ってなんかダラダラしちゃうよね」

 だから、私も千聖くんに合わせて何も尋ねられない。

「そーそー。しかもおもち食べすぎてさぁ、正月太りしちゃったかも」
「あ、うん、私も……」
「えー、美月は全然体型変わらないよ?」
「か、隠れてるところにお肉ついちゃうから」
「そうは見えないけどなぁ」

 けれど、ほんとはすごく気になる。

 大晦日のあの日からずっと、私の心の中を占めているのは、〝神木さん〟の存在。

 千聖くんに一番近い存在に感じたの。

 私のことを彼女だって嘘までつくのは、多分千聖くんにとって神木さんのことがまだ特別だから。

「でも、お正月のときくらいはぐーたらしていいと思う!」
「え?」
「一年中のたった数日だけ好きなように過ごすこと神様だって許してくれるだろうし」
「な、なにそれ……」
「なにって、神様の許可があればお正月くらいぐーたらしてもいいかなって」

 こうやって見たら千聖くんは、いつも通り。

 何も変わらない。

「まーでも、家でダラダラするんだったら美月に会いに行けばよかったなぁ」

 相変わらず明るくて元気で楽しそうにしゃべる千聖くん。

 やっぱり、知りたい。

 このまま何もなかったみたいに過ごすのは、私には無理だから。

 それに今なら聞けそうな気がする。

「あのさ、千聖くん」

 一度息を飲んだあと、

「神木さん……とは、どういう関係なの?」

 恐る恐る尋ねてみると、楽しそうに笑っていた顔が一瞬でなくなった。そして、「え」困惑した声を漏らした千聖くん。

 動揺するのは、何か理由があるから。

「あのときの千聖くん……なんだか表情が曇ったし、それに私の手を掴んですぐに逃げたでしょ? だから何かあるのかなって思って……」

 真っ直ぐ瞳を見据えると、かすかに揺れる彼の瞳。そこには、困惑の色が浮かんでいるようで。

「何かってなに?」

 今度は、あの日みたいに逃げられなかった。