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 千聖くんと仲直り(?)をしてから数日が過ぎた。
 バイトがない日は、またこうして一緒に公園で過ごすことになった。

「家、大丈夫? 苦しくない?」

 私の過去を打ち明けてから、千聖くんはなにかと私を心配するようになった。

 家族との溝は、約一年にも及んでいた。

「今までと相変わらずって感じかな」

 それがたった数日で埋まるわけがなく、今もなお一定の距離が空いている。

 千聖くんは私をすごく心配してくれている。その証拠に向けられる瞳が切なくて。

「でももう、大丈夫だよ」

 私は、知った。一人じゃないということを。

 だって。

「千聖くんがいてくれるから」

 自分がこんなことを言うなんて想像もしていなかった。

 けれど、素直に言えるようになった私の心は少しだけ軽くて。

「よかった、ちゃんと俺の存在が役に立てて」

 ──千聖くんの存在は、日に日に私の中で大きくなってゆくようだ。

 私の世界は、相変わらず曇り空。

 家族との溝は修復できず、中学の友達とは縁が切れたまま。出口の見えないトンネルが続いている。
 けれど、そこに一筋の光りが照らしたのは間違いない。

 光り──それは、千聖くんのことだ。

 彼がいなければ私は今、どうなっていたか分からない。

「今日もすっごい寒いよね。今にも雪が降り出しそうな空」

 そう言っておもむろに空を見上げるから、つられて私まで顔をあげる。たしかに今にも雪が降りそうなほど灰色の雲で覆われていた。

「今年はホワイトクリスマスになりそうだなぁ」

 前に一度、千聖くんが言っていた言葉が頭の中に浮かぶ。

 〝雪でも降ればテンション上がるのに〟

 雪なんか降ったらただ寒いだけ。むしろ感情は急降下するだろう。今まではそう思っていたのに。

 でも今は、少しだけ雪が降るのを期待している自分もいて。

「美月、クリスマス空いてる?」

 急に空から私へと顔を落とすから、視線がぶつかって。

「く、クリスマス?」

 どきっと胸が早鐘を打つ。

「うん、一緒にケーキ食べたりしようよ」

 イベントなんて全然楽しみじゃなくて、むしろ無くなってしまえばいいなんて思っていたのに。

 ……すごく楽しそう。

 あ、でも、そういえば。

「……ごめん、バイト入れちゃった」

 どうせ今年は家にいたくないからって店長に聞かれて二つ返事でOKしちゃったことを思い出す。

「え、そうなの?」
「う、うん」

 あのときは、自暴自棄になっていたからクリスマスなんて楽しみではなかった。