◇


「……ふぇ〜……ヒックっ」


 先輩がいなくなったあと、中庭で一人涙を流した。

 「好き」の思いを込めながら。

 ひっそりと、一人で。


「──何してんの」


 突然、そんな声が聞こえた。
どこかぶっきらぼうで低い声。

 その声に聞き覚えがあった私は、涙を流しながら顔をあげる。
 私のすぐ近くに立っていたのは、幼馴染みの賢斗(けんと)くんだった。


「もしかして先輩に振られたのか」


 オブラートに包むこともせず、私の核心をついた。
 賢斗くんの言葉が私の心に棘を刺す。


「……賢斗くんには関係ないでしょ」


 先輩とは対照的で、優しくないし見た目クールで怖いし、今みたいに意地悪なこと平気で言っちゃうし。


「まあな」

 なんて言って、ポケットに手を突っ込んで、私のそばに立ち尽くす彼。


「……だったら、今は一人にして」


 賢斗くんの前では、強がった。

 幼馴染みに泣いてるところ見られたくなかったから。

 意地悪な賢斗くんのことだもん。どうせ、『高校生になってまだ泣くのかよ』ってバカにするに決まってる。