少し肌寒い三月の初め、まだ桜が咲き始めた頃、卒業式がやってきた。

 先輩たちが、涙を流しながら体育館を歩いて行く姿を拍手をしながら見送った。


 それからしばらくして、校門前にはたくさんの卒業生で溢れ返る。


「あのっ、羽山(はやま)先輩!」


 卒業式が終わって、写真を撮ったり後輩と話をしたりする先輩たちの姿の中から、誰よりもキラキラと輝いて見えた先輩の名前を呼んだ。

 そしたら先輩は、おお、と私に気づいて軽く手をあげると、友達に何かを言って別れたあと私のそばへとやって来る。


「どうした?」


 いつものように優しく尋ねてくれる先輩。

 懐かしくて、愛おしくて。

 今までの思い出が、走馬灯のように頭の中に次から次へと溢れてきて、泣きそうになるのを我慢して、顔をあげた。


「あのっ、話があるんですけど……少しだけいいですか……?」


 少しの勇気と不安が、交錯する。

 断られたらどうしようって怖かった。