「あー、マジか……」

あと一歩のところで間に合わなかった。
遠ざかっていくバスの後ろ姿を見つめながら、はあっとため息をつく。
雨が酷くなる前に早く家に帰りたかったんだけどな。

夕方から激しい雨が降るでしょうと気象予報士が言っていた通り、部活が終わる頃にポツポツと弱い雨が降って来た。
雨足が強くなる前にバスに乗りたいと思い、急いで片づけを済ませ、着替えて部室を飛び出したというのに、バスに間に合わなかった。
そんな俺をあざ笑うかのように、雨がザーッと音をたてるくらい強くなる。

次のバスがくるまで20分。
高校前のバス停には一応、屋根が付いているけれど、叩きつけるように降る雨のせいで水がはねるからズボンの裾は濡れて色が濃くなっていた。
少し風が吹いているせいで、屋根があっても雨が吹き込み、傘が欲しいところ。
設置されてあるベンチも濡れて座れない。
カバンからタオルを出して、バスが来るまでそれで凌ぐ事にした。