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ズキン、ズキンと波打つように襲ってくる痛みに額を押さえる。
自分が保健室のベッドの上にいるということは、目を覚ましてすぐにわかった。頭が重い。身体中痛い。だけど、階段から落ちたのに目立った外傷はなかった。
ケガがなくて幸いだけど、汐里は……。隣のベッドを確かめようと、カーテンを少し開く。
けれど隣のベッドは空っぽで、綺麗に整えられた真っ新なシーツには誰かが横になっていた気配すらなかった。
まさか私だけ無傷で、汐里は病院に……。血の気が引いて、頭がクラクラする。
一旦心を落ち着けようと、額を押さえてベッドに身体を倒したとき、保健室のドアがガラガラと乱暴に開いた。
「失礼しまーす。あれ、先生いねーじゃん」
聞き覚えのあるセリフに、ドキッとする。カーテンの隙間から見えたのは中尾くんで。その姿に、思わず呼吸が止まりそうになった。
体操着姿で保健室に入ってきた中尾くんは、私が手当てをしてあげたはずの左腕を押さえてきょろきょろとしていた。
保健室の先生を探して困っている彼は、私が汐里と階段を落ちる前──、よりももっと前に見た彼と全く同じ行動をしている。
どういう、こと……?