予鈴は数分前に鳴り終わっていた。



 いつもなら5分後にショートホームルームが控えているため、教室以外は人の動きが極端に少なくなる時間帯なのだが、年度初日でありクラス替えもあった今日は大分勝手が違うらしい。


 始業式開始まで少しばかり時間の猶予ができたせいもあってか、それぞれの教室内はもちろん廊下のあちらこちらではまだ多くの生徒たちが楽しげに話に花を咲かせていた。


 それでももう大方は校内へと足を踏み入れ、建物の外にいるのは少なくともこれから駆け込んでくる遅刻者とそれを取り締まる教職員くらいなものだろうに――。

 頭の片隅でそんなことを思いながら、篠原瑶子(ようこ)はもう一度ローファーへと履き替え、軽くはない足取りで昇降口を出る。


 濃い栗色のウェーブヘアがブレザーの背中でゆったりと流れた。