席替えから数日後。気のせいかもしれない。気のせいなのかもしれないけど。いや、やっぱり気のせいじゃない。どう見てもこれ、気のせいじゃないでしょ……

「ハナエおっはよーん」
「…!」

玄関で後ろから現れた陽菜に、靴箱の扉を焦って閉めた。中を見られたくなくて、陽菜がビックリするくらいの勢いで、バンッと。

「どうしたの?靴、履かないの?」
「いいの」
「え、いいのって、」
「靴忘れたから、スリッパ取ってくる!」
「えっ」

何をどうしたら靴を忘れんだって突っ込まれるのは当然だから、言われる前にスリッパを取りに立ち去った。
あの日、席替えをした日の二時間目。若瀬くんと授業をサボった時から、何かがおかしい。

一昨日は知らないアドレスから「ブス」「死ね」「学校来んな」ってメールが何通も届いた。昨日は机の上に、「あんたと志月くんは不釣り合い、消えろ。」って書かれたメモが置いてあった。そして今日は、下駄箱の中の靴が泥水でドロドロにされていた。あからさま過ぎる嫌がらせだけど、胸を痛めないような強さを私は持ち合わせていない。

どうしよう、こんなの若瀬くんには言えないし。どうしよう……









「は?スリッパ?」

席に着くと、早速柏木くんの視線が足元を見た。疑問に思われないはずがないって分かってたけど、気づくの早すぎ…。

「何それ、寝ぼけて履き間違えた?」
「うん」

あまり長々と触れられたくない話題だから、敢えて否定はしなかった。大丈夫、今日一日スリッパで乗り切って、家に帰ったら靴を洗って、明日からまた履いてくればいい。だから今日だけ、私の足元には触れないで。

「ハナエー、トイレ行こー」
「うん、行く行く」

パタパタとスリッパの音を響かせて、私は陽菜と一緒に教室を出た。






「あいつなんでスリッパなの?」

二人が出て行った教室で、空いたハナエの席に志月くんが座り込む。

「知らね。忘れてきたんじゃね」
「どうやったら学校に置いてある靴を忘れるわけ」
「ハハ、確かに」

だとしたら、考えられる理由は絞られてくる。

「汚しちゃったか、もしくは、」
「汚されたか。だね」