【倉田side】



「あれ、ハナエちゃん?」


二学期の終業式の帰り道。道の途中でなんとなく振り向くと、通学路を一人で歩くハナエちゃんを見つけた。一緒に帰っていた友達集団に一声掛けて、彼女の隣に移動する。

「いいんですか?お友達」
「いいのいいの、いっつも一緒だし、たまにはね」

いつも同学年の友達と帰ってるから、こうして後輩の女の子と歩くのは少し新鮮だ。

「倉田先輩は友達がたくさんいるんですね」
「ん?んー、まぁ、そうだね」

そこで会話は終わってしまった。なにか話さなきゃって思うけど、よく考えたらこの子のことを何も知らない。なに話せばいいんだろうって、俺たちの関係はその段階だ。

「そういえば陽菜は?」
「柏木くんと約束があるみたいで、先に帰っちゃいました」
「そっか。志月は?」
「先生に呼ばれてて、遅くなるから先帰っててって」
「は?アイツなんかやらかしたの?」
「多分進路調査の紙を白紙で出したからだと思います」
「白紙!?んだよ、相談してくれればいいのに」

そんなことをボヤいていると、ハナエちゃんの笑い声が聞こえてきた。
え、俺なんか変なこと言ったかな?

「なに、どした?」
「いや、ほんとにお兄ちゃんみたいなんだなと思って」
「え?」
「弟を心配する良いお兄ちゃんみたい」

微笑ましく笑う彼女に、つられて俺まで笑ってしまう。

「まぁ年上だし、小さい頃からあいつらの面倒ずっと見てきたからね」
「みんなどんな子供だったんですか?」
「んー、志月はとにかく負けず嫌いで、テストの点とか悪いとすぐ泣いて俺んとこ来てた」
「へぇ、若瀬くん、負けず嫌いなんだ」
「陽菜は俺らの真似して木登りとかチャンバラごっことかしたがるから、女の子なのに傷だらけで。それからカッシーは、そうだなー……あいつが一番よく泣いてたかな」

前を歩く友人たちから、数メートル遅れて歩く俺たち。空からは、少しだけ雪が降っている。今日は終業式だけで解散だったから、時間はまだまだ昼過ぎで。雪が降る空は青く明るく、空気がとても澄んでいる。