ゴールデンウィークも明け、日常が戻ってきた。
連休明けほど学校を休みたいと思う日はない。
まあ、ゴールデンウィーク中でも忙しく出勤していた歩がいるので口に出しては言えないが、夜更かしになれた体内時計を元に戻すのは大変だ。
あくびをかみ殺して登校していると、後ろから肩を叩かれる。
「おはよう、瀬那」
「あー、翔か」
「あー、翔かって、声に力ないぞ」
「昨日夜更かししちゃって」
今度は抑えきれず、大きなあくびをする瀬那。
「また本読んでたのか? 飽きないなぁ。まあ、連休明けの学校がダルい気持ちは分かるけど」
「しかも、もうすぐ中間テストだしね」
「はあ、嫌なこと思い出させるな」
嫌そうにしつつ、翔のテストの結果はいつも上位だ。
まあ、だからこそプレッシャーも大きいのだろうが。
何せ生徒会長だ。
「生徒会長さんが、成績悪かったら他の生徒に示しが付かないものね」
「って言っても、もうすぐ引き継ぎだけどな」
二人は今年三年生。進路のこともあるので、任期は一学期の終わりまでだ。
それまでに次の生徒会を決める選挙と引き継ぎがある。
それプラス中間と期末のテストもあるので、しばらくは翔も忙しいだろう。
「まあ、頑張って下さいな、生徒会長さん」
「人ごとだな、おい」
「人ごとだもの」
そんな話をしている内に学校に着いた。
「じゃあな、たまには昼ご飯食べにこいよ」
「うん。じゃあね」
教室の前で翔と別れて教室の中に入ると、ニコニコとしながら愛菜が近付いてきた。
「ねえ、瀬那ちゃんって生徒会長と付き合ってるの?」
なれなれしく「瀬那ちゃん」と呼んでくる愛菜に嫌悪感が湧いてくる。
聞こえなかったふりをして自分の机に向かったが、後から付いてきて鬱陶しいことといったら。
「ねえねえ、一緒に登校してきたりして、仲良いよね。付き合ってるんでしょう?」
ねえねえと何度もうるさい愛菜に、睡眠不足で機嫌の悪い瀬那がキレた。
最近近付いてこなくなって安堵していたのに、またつきまとい始める気になったのかとイラついた。
「私が誰と付き合っていようと、あなたに関係ないでしょう」
かなりきつめの口調でそう言えば、愛菜がショックを受けたような顔をする。
「そんな言い方しなくたって。友達なのに」
「あなたと友達になった覚えないから」
「酷い……」
酷いも何も、本当のことを言っただけだが、愛菜は今にも涙がこぼれ落ちそうなほど瞳を潤ませる。
そんな愛菜を見ても、かわいそうなどとは思わず、面倒臭いという気持ちの方が先立つ。