「何だよ……いいだろ」

「いや、懐かしいなと思ってね。
 お前も昔は、そうやって私や母さんにせがんで、読んでもらっていたからね」

「いつの話だよ!?それは……」

 シンの意外な過去を暴露するお父さん。
それに対してシンは、慌てて言い返していた。
 意外にも可愛い時もあったんだなぁと思った。

「今は、ここの本は、全部読んで飽きたと言って、なかなか来なくなったからね。
 たまには、こっちにも顔を出しなさい。
カレンちゃん達を連れて」

 シンのお父さんが、そう言うとちょっと複雑そうな表情になりながらも「あぁ……」と言った。
 私は、フフッと笑う。しかし……。

「シンは、ここの本全部読んだの?
 じゃあ、全部暗記しちゃったってこと?」

「まぁーな。ここにある分なら、何処に何の本があるかまで分かるぜ」

「すごーい!!」

 さすが“記憶力”の能力を持っているだけはある。
こんな巨大図書館の本を全部暗記するなんて……。
 改めてシンの優秀さを理解する。

「俺のことより選んだら帰るぞ。
 寄り道し過ぎて日が暮れてしまうぞ」

「まだ明るいもん」

ちょっと照れて頬を赤くするシンを見て可愛いと思った。照れてる、照れてる。
 シンは、意外と照れ屋さんだったようだ。

 そして本をいくつか借りると私達は、帰ることにした。
シンのお父さんに「またおいで」と言ってくれた。
 薬もあるし、また来ようと思ったのだった。