「や、やめろ……痛い、痛い……離して!!」
クマの男の子は、痛そうにバタバタと手足を動かして暴れていた。
しかし、それでもビクともしない。
普段、物静かなセイ様とは思えない行動だった。
「やめろ!!痛がっているだろーが!?」
煌君は、同じ獣族の男の子が苦痛になっているのを見て居ても立っても居られなくなったのか叫んだ。
しかしセイ様は、無表情のままだし、力も抜かない。
それどころか、痛そうに暴れていたクマの男の子は、段々と身動きが小さくなっていく。
しばらくするとセイ様は、手を離す。
するとドサッと倒れてしまった。そ、そんな……!?
「き、貴様……よくも俺の仲間に!?」
怒り狂った煌君は、セイ様に飛びかかろうとしてくる。
私は、必死に煌君を抱きついて止めた。
だ、ダメ……騒ぎを大きくてしないで!!
「だ、ダメだよ……煌君。
セイ様は、キョウ様の側近なんだから!!
下手に下がったら、煌君の身が危ない」
「うるせー離せ!!アイツは、俺の仲間を殺したんだ!?
アイツは、まだ幼い子供だぞ?
そんな奴を簡単に殺す奴は、俺は許さねぇ!!」
まるで、さっきのクマの男の子と同じだ。
完全に血が上っていて手がつけられない状態になった。
しかし、そんな状況でも顔色一つ変えないセイ様だった。
「……殺してはいない。記憶を消しただけだ」
「……記憶を消した……だと?」
するとセイ様は、包みを持ち替える。
そしてチラッと煌君を見た。
「……この子から父親の記憶をすべて消した。
これでこの子は、復讐に縛られることもないし、過ちを犯すこともなく幸せに暮らせる」
それだけ呟くと山道を登ろうとする。
しかし、それだと納得がいかない煌君だった。
セイ様に怒りをぶつけた。