「じゃあ孝之は、菜々子が課長と結婚出来なくてもいいってわけ!?
趣味は、あくまでも趣味でしょ?」
優しくフォローしてくれる旦那さんと、それに対して怒る美希だった。
「そうではないけど……ただ菜々子さんは、悔いのはない選択をしてほしいんだ」
悔いのない選択か……。
私は、どちらの意見も嬉しかった。
しかし美希の言う通りだ。いや、自分の中でも分かっていた。
ただ、何処かで課長に甘えていたんだと思う。
もしかしたら分かってくれるのではないかって……。
こんなのただの傲慢なワガママだ。
そう気づくと涙が溢れてきた……。
「美希……孝之さん。
ごめん…私が悪かったの。だから喧嘩しないで……」
2人が揉めることじゃない。
私がハッキリすればいいだけなの話。
どっちらが大事だなんて……考えれば分かることなのに。
「私……結婚する。課長より大切なものなんてないもの」
「菜々子……いいのね?」
美希の言葉にコクりと頷いた。
後悔するとしたら、きっと好きな人と幸せになれなかったことだろう。
課長と一緒に居られないこと。
趣味は、趣味で終わらせなくちゃあ……。
私は、そう決意すると夕食を食べて美希の自宅を後にした。
明日断りの電話を入れよう。
これでいいと思いながらも駅まで歩いていると途中で電話が鳴った。見ると課長からだった。
胸がドクンッと大きく高鳴った。
この事を課長に伝えるべきなのだろうか?
いや、わざわざ伝えたら私が結婚したくないようにも聞こえる。
だけど何も言わないまま結婚して本当にいいのだろうか……?
迷いながらも恐る恐る電話に出てみることにした。
「もしもし……」
『遅くに悪いな。今何処に居る?
大事な話があってお前のアパート近くに居るのだが、ちょっとだけでも会えないか?』