春の香りが漂い、視界がピンク色に染まる頃、神社には親子連れの姿が増える。

その手を柔らかく繋ぎながら、「桜が綺麗だね」とみんな笑い合っている。

幸せの象徴、ありふれた家族の形。

そんな優しい空気に包まれている参拝客の波を、沈んだ顔で通り抜けていくひとりの少女がいた。

「こんにちは。なにをお探しですか?」

丈長(たけなが)と呼ばれる和紙で結った一本髪を垂らしている巫女は少女に向かって微笑む。


「あの……〝裏絵馬〟って本当にあるの?」