――これは俺と小鞠の出逢いの物語である。




それは俺が彼岸の人間になって縁切りという仕事を始めてすぐのことだった。

ざわざわと揺れる木々に囲まれた古びた拝殿。そこに出入りするようになってからずっと視線を感じていた。

どこにいても、なにをしていても監視されているような、まとわりつくようなしつこい視線にうんざりしていた。

「あのさ、そういうのって普通バレないようにするんじゃね? 見られてるこっちが気を遣うほどの眼力を送ってくるんじゃねーよ」

我慢の限界に達した俺は、初めて視線の相手に話しかけた。周りには誰もいない。これじゃ独り言を言ってるただのおかしいやつになってしまう。

「火で(あぶ)るぞ。犬」

「ひぃぃ。ごめんなさい……!」

脅すように言うと、ボワンと土煙が舞った。拝殿の前に立てられている像が少女の姿に変わっていた。

見た目は中学生……いや、もっと幼く感じるだろうか。彼女は真っ白な着物を身に纏い、俺のことを(つぶ)らな瞳で見つめている。