「えっ!?ちょっと…和季。その人は、パパじゃないわよ!!
あの……すみません。息子が……」

 慌ててやめさせようとするが、よほど
雰囲気が似ているせいか 何度もパパと連呼する。
 しかも抱っことねだっていた。
恥ずかしい……確かに似ているけど

「そんなに似ているのか?
前に君にも同じ事を言われたが?」

 青柳さんは、若干困惑した表情で尋ねてきた。
それは言えない。似ている所が多いなんて……。
 微妙な癖まで似ているから和季が間違えるのも無理はない。

「まぁ……その……雰囲気とか……少々」

 私だって…課長と別れた後。そのせいもあって
青柳さんに課長の面影を重ねていた。
 世の中には、似た人が3人居ると言うが……。
間違いなく課長によく似た3人の内の1人は、青柳さんだろう。

「まぁ、似た方って居るものですからね?
それより行きましょうか……」

慌てて話しを逸らした。
 教習所の近くにあるレストランまで行く。
 途中も和季があまりにも青柳さんに抱っこをねだり
ぐずりだすため仕方がなく和季を抱っこしてくれた。
 その姿が、さらに似ていた。むしろ和季は、
課長似なので親子に見えてしまうほどだ。
 思わず笑みがこぼれてしまう。

「笑わないでくれ……正直。
赤ん坊を抱いた事がなくて戸惑っているんだ」

「すみません…フフッ……」

 青柳さんは、複雑そうな表情をしていたが
ダメだ。やっぱり笑ってしまうわ。
 何だか課長を見ているようで微笑ましい。

 青柳さんは、恥ずかしいのか頬を染めていた。
その雰囲気まで、そっくりだった。
 そしてレストランに着くと店内に入った。
和季は、私が受け取り抱っこした。

 注文すると話す事がなく沈黙してしまう。
この雰囲気、前にもあった。
 自分の課長に対する後悔や悲しさでいっぱいの時に。
青柳さんの言葉で私は、勇気をもらった。
 叱り飛ばしてくれて良かったと心から感謝をしたい。

 あの時は、叱り飛ばしてくれなかったら
私は、課長のもとに行けなかった。
 そしてずっと後悔ばかりして情けない人生を送っていた。