それから数分後。
待ち合わせしていた課長が店内に入ってきた。
 私は、慌てて立ち上がり頭を下げた。

「すまない…遅くなった」

「いえ、私もさっき来たばかりなので」

「じゃあ、行こうか?」

「はい」

 伝票を取りレジで支払いをすると店を出た。
何処に連れて行ってくれるのだろうか?
 課長の隣りで歩くのも不思議な感じだ。

「ココだ。料理が美味しくてたまに来るんだ!」

そう言って案内されたお店は、小さな小料理屋だった。
 中に入ると年配の店長らしき人と若い板前さんが
数人調理をしていた。
 店内も落ち着いていて上品な感じのお店だった。
 課長のお母様も上品な方だったし、こういうお店が好きなのだろうか?

「いらっしゃい。
おや、今日は…女性の方をお連れかい?」

 店長さんらしき人がそう言ってきた。
物腰の柔らかそうな人だ。

「はい。奥の席いいですか?」

「どうぞ、どうぞ。
ゆっくりしていって下さい」

 丁重に言われる。奥の席に座ると私は、
メニュー表を見るといろんな料理が書いてあった。
 チラッと見ると課長も真剣な表情で選んでいた。
課長って真剣な表情って怖いわよね。
 そう思っていたら目が合った。
私は、慌ててメニューに目線を戻した。

「決まったか?」

「あ、えっと…この鮭と野菜のホイル蒸しと後は、
豆腐サラダにします」