「確かに。良かったですが……いや、良くない。
社長にしてもらう理由がありません!!」

 私は、思いっきり否定をした。
だって私と社長は、秘書と社長の身。
融資とかしてもらう理由にはならない。
 そりゃあ、自分がどうにかなる金額ではないだろうけど
だからと言って恋人でもないのに……。

 結婚の挨拶だって社長は、既婚者なのに結婚なんて出来ないし……。
不倫関係だなんて両親には言えない。

「まぁ細かいことは、気にするな!」

「気になりますから!!」

「頑固だなぁ……夏希は、それでは結婚が出来ないぞ?」

誰が、頑固だ!!
それに誰のせいで婚期を逃していると思っているのよ!?

「だが、俺が融資を出さなかったら間違いなくあの工場は、潰れていた。
 それに対して言うことは、あるのではないのか?」

 うっ……それを言われると辛い。
確かに、社長が居なかったら潰れていたかもしれないけど……。

「それに関しては、ありがとうございました」

「だろ、だろ。じゃあお礼は、慰安旅行でいいから」

 はぁっ?何でそうなるのよ!?
私は、驚いて頭を下げてお礼を言ったが思わず顔を上げた。

「いや、無理ですから」

「なんでだ?俺のお陰で実家が助かったのならいいだろ?
 何が不満なんだ?伊勢エビより蟹がついていないと嫌なのか?」