『それがね。最近の不景気でウチの工場も危なくなってね。
融資をしてくれる銀行や会社も減ってしまい
もう工場をたたもうかと話し合っていたら、たまたま夏希の会社の社長さん。
新堂社長が挨拶にお見栄になってね。
その時に、このことを話したらぜひ融資をしたいと申し出て下さって。
お陰で工場も潰れずに持ち直したのよ!
夏希からも十分のお礼を言っておいてね』
いやいや……そんな話。私、まったく聞いてないのですけど!?
工場が危うくなってることも知らなかったし
それを社長が融資して助けてもらったことすら知らされていない……。
「ねぇ、それよりも社長が私の家に挨拶に来たって
何の挨拶に来たのよ?」
『何って……結婚の挨拶じゃない。
もう夏希ったらお母さんに黙ってあんな素敵な人と付き合っているなら早く言いなさいよね。
しかも働いている会社の社長さんだと言うじゃない。
お父さんも驚いて腰を抜かしちゃったわよ!』
はぁっ~!?結婚の挨拶って、どういうことよ?
私と社長は、結婚出来ないし。
それよりも話が色々と飛び過ぎているんですけど!?
何で私抜きで話が進んでいるのよ?
社長の行動に驚かされてしまった。
「あ、あのね……お母さん。結婚のことなんだけど……」
『あぁ社長さんは、ハワイで挙式を挙げたいみたいね?
お母さんもお父さんも海外旅行なんて初めてだから緊張しちゃうわ。
じゃあ、挙式とか色々決まったら早めに教えてね。また連絡するわね』
はぁっ!?そう言いながら一方的に電話を切られてしまった。
ちょっとお母さん!?
どうしよう……知らない間に話が進んでしまっている。
融資の事といい…結婚の挨拶といい社長に直接話を聞かないと……。
私は、次の日に社長に問いただした。するとアッサリ認めた。
「あぁ、挨拶に行ったし融資の件も俺が申し出たぞ!」
「私は、何も聞かされていません。
それに、何で私抜きで勝手なことをしているのですか!?」
信じられない。しかも結婚の話まで……。
「だって、お前に言うと反対するじゃないか?
それに、お陰で工場が持ち直したのなら良かったではないか……」