「それぐらいの対処なら部下に行かせたらどうですか?
 わざわざ多忙な社長が出る必要は無いのでは?
スケジュールの都合もありますし」

 だが、栗本さんが慌てて止めてきた。
しかし社長は、背広を羽織ながら
 「いや、ただのおもちゃの不満ぐらいならいい。
だが子供が我が社のおもちゃで怪我をしたのなら
社長として謝るのが礼儀だ!」と言った。

私は、早々と車の手配をした。
 私と栗本さんも一緒にクレームをしてきたご自宅に行き
深々と頭を下げて謝罪した。

「今回は、申し訳ありませんでした!」

「少しの怪我で済んだから良かったけど
ウチの子に怪我をさせるなんてどういうつもりよ!?
 もし酷い怪我だったらどうする気だったのよ?」

「大切なお子様が怪我をされてお怒りなのは、ごもっともです。
 今回の件は、我々の不手際です。本当に申し訳ありませんでした」

 一切言い訳をせずに社長は、自ら深々と頭を下げて謝罪した。
その姿は、潔くて男らしいと思った。
 私は、その姿に思わず見惚れてしまう。

「そ、そんな謝罪程度で済むなんて思わないで。
あんな危ないおもちゃなんて、もう二度と遊ばせ……」

「もしかして今、抱いているお子様が怪我をしたお子様ですよね?」

お客様が言い終わる前に突然社長が言い出した。
 お客様は、困惑した表情をすると社長は、気にすることなく
その怪我をしたお子さんに近づいた。

「痛い思いさせて悪かったな。
 今度は、もっと安全にしたおもちゃで遊ばせてやるからな」

 そう言って優しい笑顔で微笑みかけ頭を撫でてあげた。
すると小さなお子さんは、キャッキャッと笑顔で抱っこを要求してきた。

「よしよし。抱っこしてもよろしいですか?」

「えっ……あ、はい」