時計を見ると5時過ぎ。起きるには、少し早いぐらいだ。
チラッと見たら目覚まし時計のそばに結婚指輪が置いてあった。

 社長が置いたのだろう。
キラッと光る指輪を見たら切なくなってきた。
 私達は、けして結ばれない。社長が、既婚者である限り。

 何で…この人は、独身ではないのだろうか……。
神様は、意地悪だ。私は、ため息を吐くと起き上がった。
 そしてシャワーを浴びてから朝食の仕度をした。
社長が起きる前に済ませようとしたが、その前に目を覚ましたようだ。

「う~ん。おはよう…夏希」

「おはようございます。社長」

「お前のベッドって寝心地いいなぁ……夏希の匂いがする」

 ぬくぬくとまた、布団の中に潜り込んでいく。
社長が言うといやらしく聞こえるのは、何故だろう?
それよりも匂いを嗅ぐな。

「朝食もうすぐ出来るので早くベッドから出てシャワー浴びて下さい。
置いてあるタオル自由に使って頂いて結構ですから」

「う~もう少しこのまま寝たいのに……」

「いいから起きて下さい」

私が叱るとブツブツと文句を言いながら起き上がってきた。
 そして社長がシャワーを浴びている間に
私は、朝食を手早く作りテーブルに並べた。すると
社長のスマホが鳴り出した。
 あ、大事な用件かもしれない。

「すみません、社長。
携帯が鳴っているのですが……どういたしましょうか?」

「出られないから代わりに出てくれ!」

私は、シャワー中の社長に声をかけたが
そう言って返事を返された。出ろと言われても……。