「まぁ、あんたの場合慣れるしかないんじゃない?
その特殊な環境に……」
恵美に続いて香奈子は、そう言ってきた。
慣れるって……無茶を言わないでよ?香奈子。
「自分で本当の事を言っちゃうのは?」
「言おうとしたけど…途中で気づいたの。
噂されている私が言うと逆に言い訳になるのではないかって」
『あぁ……確かに』
私の意見に納得する2人。そう…下手に私が言った所で
『見苦しい言い訳』『平気で嘘をつく痛い勘違い女』
などと言われるのが分かっている。
噂は、先に言った方を信じてしまう傾向がある。
せめて社長の口から真実を言ってくれれば、
少し変わるかもと思ったのだが。
社長は、噂の方を楽しんでいるしあれでは、言う気はないだろう……。
「ねぇ、夏希。この際早めに産休をとったら、どうかしら?
あなたが仕事に真面目なのは、知っているわ。
だけど…そのまま居るとストレスで
お腹の赤ちゃんに悪影響する事だってあるわ。
どちらにしろ産休をとる気なら早めにとって
お腹の赤ちゃんのためにも身体を休めた方がいいと思うわ」
「……うん」
確かに恵美の言う通りだ。
お腹の子のためにも私が健康でいないといけない。
このままだと確かに悪影響よね。
自宅に帰ると社長にその事を相談してみた。
社長とは、結婚してから新居で一緒に住んでいる。
子供が産まれることも考えて広めの2階建ての一軒家を購入した。
「あぁ、それなら俺も考えていた。
早めに産休をとった方がお腹の子のためになるしな」
「いいのですか?」
「秘書の仕事は、また栗本に頼むとしよう。
お前は、まず元気な子を産む事だけ考えろ」
そう言いながらギュッと私を抱き締めてくれた。
私は、嬉しくなり「はい」と返事した。
ちょっと気持ちが楽になった。
社長もなんやかんやと言いながらも私とお腹の子の事を考えてくれていた。
それが嬉しかった……。