この前、宮田くんから聞いたうわさは、果たしてほんとうなのだろうか。
「あのさぁ、浬くん」
不意に声をかけられて、ハッとすると、彼女は不満そうな顔を俺の方へ向けた。
「さっきからずーっとそうやって見てるけど、私の顔に何かついてる?」
「……え? 俺見てた?!」
「うん」
しまった、あまりにも露骨すぎた。
「た、多分ボーッとしてたのかも!」
慌てて言葉を取り繕うが、そんなもので彼女が納得するはずがない。
「それ嘘でしょ」
「うう、嘘じゃないよ!」
「だって浬くん何かを誤魔化すとき、いつも言葉噛むもん」
「それに私か気づかないとでも?」と付け足すと、ギラリと睨みを効かせる。
冬で寒いはずなのに、なぜか、背中に冷や汗がダラダラと流れる。
「どうしてさっきから私のこと見るの?」
「あー、いやー、それは……」
まさかきみは幽霊なんですか、なんてストレートに聞けるはずがないし。
俺は言葉を探すが、適当なそれが見当たりそうにない。
「私の読書の時間を邪魔したんだから、ちゃんと理由説明してもらわないと!」
「ええ…っ?」
「ほら、早く言って!」
痺れを切らした茜音ちゃんが俺へと詰め寄る。
彼女を怒らせないように、尚且つ、これ以上追求されないように話を逸らすには……
「……茜音ちゃんは…幽霊、いると思う?」
恐る恐る言葉を紡ぐと、「…幽霊?」と呆気に取られたような表情で固まった。
彼女からは怒ったオーラが消えて、ホッと安堵する。