えっ……?それは、どういうこと?
 重勝さんの言っていることは、難しくて私には、分からなかった。
 首を傾げていると重勝さんは、ハンカチを取り出すと私に差し出してきた。

「実は、警察と鬼龍院組は、古くからの付き合いなんです。
 特に現警視総監である麻生さんは、前組長のご友人で若……葵様のこともよく知っています。
 今回のことも関係ないことはご存知でしよう。
だからこそ事情を詳しく知りたいのかと。
 また何か情報を手に入れて我々に流してくれようとしているのかもしれませんね」

 私は、それを聞いて驚き過ぎて唖然とした。
現警視総監と鬼龍院さんが古くからの知り合いってこともかなり驚かされたが。
 何かの情報を手に入れて流そうとしているだなんて……。
 そんな嘘のような話が本当にあるのだろうか!?

「な、なんで……そんなめんどくさいことを?
普通に話せばいいじゃない!?」

 わざわざ任意同行なんかしなくてもいいじゃない。
紛らわしいわよ……本当に。
 怒って文句を言うと重勝さんは、苦笑いする。

「そうですね……。しかしそういう訳にはいかないんですよ。
 なんせ相手は、警察。下手にヤクザと関わりがあると世間に知られては、面子が守れません。
 なので任意同行として連れて行き話をそこでしたいのでしょう。
 すぐに釈放出来ますし、大切な情報を誰にも聞かれずに守れますから……」

 うーん。……そういうものなのかしら?
警察も意外と面倒くさいものだと思った。
 私には、理解しがたいことだわ。

 とりあえず鬼龍院さんは、逮捕ではなく無事だと分かり私は、ホッと胸を撫で下ろした。良かった……。
 車に送ると言われたが鬼龍院さんが戻って来ないと
自宅に帰っても落ち着かない。
 なので私は、鬼龍院さんの自宅で待たせてもらうことにした。

 鬼龍院さんが戻ってきたのは、それから日付が変わろうとしていた頃だった。
皆も心配して起きて待っていた。
 車のところまで迎えに行くと鬼龍院さんは、少し疲れたようにため息を吐いていた。

「鬼龍院さん。お帰りなさい!!」

 心配していた私は、嬉しくなり思わず鬼龍院さんの胸元に飛び込んでしまった。
 彼もまた驚きながらもギュッと抱き返してくれた。

「上紗さん……怖かったよ!
 会うなり麻生おじさんに叱られちゃった。
『もっとしっかり管理しないか!!』って……。
 後でチョコケーキくれたけど僕……あの人苦手。
すぐにガミガミと怒るんだもん」

そう話す鬼龍院さんは、うるうると涙目になっていた。
 どうやら重勝さんの言う通り酷い取り調べではないようだ。チョコケーキ貰っているし……。
 ガミガミと怒るって……昔の頑固親父みたいね。
よしよしと背中を優しく叩いていたら重勝さんが私達のところに来た。