大河内幸也は、私の発言を聞くと驚くもすぐにアハハッと大笑いしてきた。何で笑うのよ!?
何だか馬鹿にされみたいで腹が立ってきた。
すると大河内幸也は、両手を挙げて立ち上がった。
「分かったよ……降参だ。
さすがに乗り込まれたら手も足も出ない。
君の大切な鬼龍院さんは帰すよ!」
やれやれと言った表情で私に近づいてきた。
しかし言葉と違って彼の行動に動揺して後退りする。
えっ?何で……降参してるのに私に近づいてくるの?
大河内幸也は、私を見るなりニコッと笑った。
「……なんて言うと思った?」
えっ……?
その瞬間だった私の持っている金属バットを掴んだ。
し、しまった!!
力を入れて振り払おうとしたが男の腕力に女である私が勝てるはずもない。
しっかりバットを掴まれ身動きが出来ない。
「本当……女ってピーピーうるさいよね。
俺さ……いい子に出来ない奴と女って大嫌いなんだわ。だから悪く思わないでよ……」
ニヤリと笑う大河内幸也を見て私は、絶体絶命だと思った。
どうしよう……殴られる。
身体がガタガタと震えてきた。するとその時だった。
鬼龍院さんが大河内幸也に向かって回し蹴りをしてきた。
大河内幸也は、蹴られて床に叩きつけられる。
鬼龍院さんは、腕はヒモで結ばれた状態だが得意の回し蹴りは出来るみたいだ。
「くっ……」
「俺は、どうなってもいいが彼女に手を出すのは、やめてもらおうか?大切な婚約者なんでね」
その姿は、キレている状態の鬼龍院さんだった。
あの泣きそうな時と違い黒く冷たいオーラを漂わしていた。
その姿に私の心は、ドキドキと高鳴っていた。
だが大河内幸也は、それを聞いてアハハッと笑ってきた。な、何で蹴り飛ばされたのに!?
動揺していると大河内幸也は、少し切れた唇を手で拭うと立ち上がった。もしかして、まだやる気!?
鬼龍院さんは、ビクつく私を庇うように前に立った。
するとクスッと笑ってきた。
「……冗談だよ。彼女に手を出す気はない。
俺は、非力な女に手を挙げる気はない。
まぁ彼女の場合は、非力より根性はあるみたいだけど」