私は、一瞬驚いていたが、それよりも腹が立ってきた。
 思わず被っていたヘルメットを取ると大河内幸也に向かって投げつけた。
 それは、もう……顔を目掛けて。しかし手で弾き返されてしまう。

「危なっ!!」

「鬼龍院さんに何をしてくれてるよ!?
今、すぐに返しなさい。さもないと私が許さないから!!」

金属バットを構えながら大声で叫んだ。
 生徒の時と違いヤクザの若頭に喧嘩を売っているのだからある意味凄い行為だろう。
 自分でもよくやるなぁ~と思ったがそんなことは、この際どうでもいい。
 何とかして鬼龍院さんを助けないと……。
すると大河内幸也は、驚いた表情をすると苦笑いしてきた。

「君が度胸がいいのは、分かったけど邪魔しないでくれるかなぁ~?
今、お楽しみ中なのに……」

 はぁっ?何がお楽しみ中よ……ただの無理やりじゃない。
どう考えても同意しているとは思えないわ。
 そもそも私まで誘拐したくせに。

「そんな許す訳がないでしょーが!!
 大体同意していないのに無理やりヤるとかどうかしてるわ。
 鬼龍院さんに手を出したら私が許さないから」

「でも……君達は、結婚していないんだろ?
 なら恋愛は自由じゃないか。
俺は、別に君から奪う気はない。ただ彼と楽しみたい。
 それが何がいけないんだい?」

 この男の脳は、恋愛馬鹿なの?
恋愛が自由でも人の恋路に邪魔する奴がまともな訳あるか!!

「あんたの恋愛観も誰とどうなろうが知ったこっちゃないわよ!
ただ鬼龍院さんの婚約者は私なの。
 鬼龍院さんの初めても鬼龍院さんの身体も全て私のモノなんだから指1本触れてみなさい。
 絶対に許さないから!!」

 もうギレ過ぎて自分で大胆な告白をしていることさえ
気づかなかった。
 鬼龍院さんは、鬼龍院さんでその言葉を聞くと頬を赤く染めて胸を高鳴らしていた。